■マルチチュードが主役の運動が広がりだした?
エジプトの話をもう一度書きます。
気になって仕方がありません。
昨日のNHKテレビ「時論公論:強制排除 どうなるエジプト」で、解説委員の出川さんが次のように話しています。
「ムスリム同胞団」は、軍と暫定政府による一斉摘発で、巨大なピラミッド型組織の指導部が軒並み逮捕され、意思統一を図れなくなる可能性があります。非暴力のグループを暴力に走らせるのは、多くの場合、国家権力による暴力です。
「ムスリム同胞団」は、イスラムの教えに基づく社会や国家の建設を目指し、エジプト社会に深く根を下ろしている組織です。
これまで、暴力を否定してきましたが、指揮命令が混乱に陥った場合、武装闘争を主張する強硬派グループが台頭し、テロや暗殺など過激な行動に出る可能性を否定できません。
一方で、組織内の穏健派グループが主導権を維持し、軍や暫定政府との正面衝突を避け、勢力の温存を図る可能性もあります。
不幸にして、そうなってしまうと、解決のための時間が長期になります。
歴史は、「急がば回れ」の正しさを示していますが、多くの場合、「回る余裕」を与えてはくれないのが現実です。
したがって、今回のエジプトも、そうなる可能性は大きいかもしれません。
しかし、そうならない可能性もあります。
出川さんがいう「ピラミッド型組織の指導部が軒並み逮捕され、意思統一を図れなくなる可能性があります」は同感ですが、その一方で、そうならない可能性もまた大きいのです。
国家権力の視点で発想するとピラミッド型組織による指導管理が当然だと思いがちですが、ネグリが主張している「マルチチュード」の運動形態は違います。
ネグリは、上から押しつけられた強制的な原理ではなく、多様な人たち〈マルチチュード〉自らが創発させていく「構成的権力」によって、下から水平的に築かれる民主的な社会を期待しています。
そして、それが、2011年に各地で始まった新しい闘争によって、リアリティを持ち始めたというのです。
つまり、2011年に始まった世界各地の広場占拠運動や抗議集会は、水平的でリーダーがいないところに、強かでしなやかな強みがあるというわけです。
私にはとても説得力があります。
これこそが、閉塞状況にあるさまざまな組織を蘇らせる、これからの組織原理だと思っています。
だから、エジプトの動きに関心があるのです。
ネグリはまた、「構成する権力」が「構成された権力」として固定化され、規範化されてしまうことを、強く危惧します。
エジプトにおけるモルシ体制は、その典型例かもしれません。
私は、エジプトの状況をほとんど知らずに、最近のマスコミ報道程度の知識しかありませんが、ネグリのマルチチュード論があまりに見事に当てはまるのに驚きを感じています。
そして、これは、私が大学生の頃に広がっていたアメリカの緑色革命状況にとても似ているのです。
あの時には、まだ環境が整っていませんでしたが、いまは違います。
エジプトの軍部政治は今度こそ終わるでしょう。
その影響は、想像を絶するほど大きいように感じます。
オバマの化けの皮もはがれるのではないかと期待したいところです。
私は、オバマ大統領がどうしても信頼できません。
世界が大きく変わろうとしている。
そんな気がしてなりません。
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