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2014/01/31

■精神のエントロピー

先日、挽歌でエントロピーに言及したのですが、それを読んだ読者から自分も同じような状況だというようなメールをもらいました。
エントロピーは言うまでもなく、熱力学の第2原則で、エネルギーや物質にまつわる話ですが、精神のエントロピーという捉え方もあります。
私の記憶では、最初に言い出したのは経済人類学者の栗本慎一郎さんです。
エントロピーとは簡単にいえば、「無秩序度」ですが、そもそも「秩序」という概念が多義的ですので、いささかの混乱が生まれやすいです。
私は、無構造化ということだと理解しています。
すべてが単一化し、構造が消えてしまうということです。
わかりやい例で言えば、水にインクを落とすと、最初はインクと水が模様を形成しますが、次第にインクがすべての水と融和し、インク色がかった一様の水になってしまいます。
完全に融和した段階がエントロピーの極大化状況で、そこからは何も動きは起こらなくなります。
熱力学で言う「熱死」状態です。

この話は、確かに社会を考える時に、比喩的に使えます。
多様な文化や考えを持つ社会は、その違いのぶつかり合いの中から、新しいものが生まれてきます。
しかし、考え方や価値観が、さらには成員の言動が画一化されてしまえば、議論も生まれなければ、思考も育ちません。
逸脱した言動は、社会が寄ってたかって押さえ込み排除していきます。
今朝のNHKの朝ドラで、戦時中の話の中で、「おかしいことをおかしいといわなければ、ますますおかしくなる」と主人公の娘が言っていましたが、まさにその通りです。
しかし、「おかしいことをおかしいという」ことは、そう簡単ではありません。

生命体や組織には、現在の秩序を維持しようとするホメオスタシスという均衡機能が発生します。
しかし、その一方で、成長を目指すカオスを求めるダイナミズムも組み込まれています。
多様性を持ちながら動的な安定性を保つのが、ホメオカオティックな秩序です。
それに対して、画一化されて逸脱行為を排除し、静的な安定を求めるのが、ホメオスタティックな秩序です。

「秩序」には前者のような「生きた秩序」と後者のような「死んだ秩序」があるのです。
しかも、それらは社会一様にあるわけではなく、社会の階層や地域によって、それらが巧妙に組み合わされています。
だから社会の一部だけを見て、どちらが支配的かを断定するのは危険です。
ホメオスタティックな秩序社会も、必ずどこかに、ホメオスタティックな秩序を管理していることが多いですし、逆もまたあります。

最近の日本はどうでしょうか。
私には、多くの人は、画一化された死んだ秩序を求めているように思えてなりません。
ある意味では、それは幸せなことかもしれません。

NPOと付き合っているとよくわかるのですが、ホメオスタティックな秩序に陥って、袋小路に入ってしまうところが少なくありません。
もしかした、人はみんな結局はホメオスタティックな秩序、つまり「死んだ秩序」を目指すのかもしれません。
そのために、組織や社会も、同じように、死を目指すのかもしれません。

そういえば、それを打破するのが、蕩尽行為だと、栗本さんは言っていました。
日本人はかなり蕩尽していると思いますが、エントロピーを低下させられないでいるのは、なぜなのでしょうか。
精神の蕩尽ではなく、経済物質的な蕩尽に留まっているからでしょうか。
あるいは、秩序の組み合わせに失敗しているからでしょうか。

まもなく日本でも、「反乱の時代」が来るかもしれません。
そうした予兆は、注意して見ると少しずつ見え出しています。

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