■「TPPを先取りする共済の危機」
「TPPを先取りする共済の危機」という論文が、岩波書店の雑誌「世界」の昨年12月号に掲載されました。
副題は「協同組合はどこに行こうとするのか」。
書いたのは、青山学院大学教授の本間照光さんです。
とてもわかりやすい論文で、「事の本質」を的確に捉えている論文だと思います。
書き出しの部分を紹介させてもらいます。
TPP(環太平洋連携協定)を特徴づけるのは、その秘密主義と強権だ。交渉の経緯も妥結内容も、人びとには秘密にされる。それと連動したアベノミクスは、規制を次々となくし、「企業が世界一活動しやすい国」(安倍首相)にする。米国の巨大企業など、「資本の組織」の利潤追求の野放しである。それは、主権、国民経済と生活、社会と社会的存在である人間と自然の全分野に及ぶ。自分たちでいのちとくらしを支え合い、リスクに向き合って「社会」を運営することを許さないということだ。本間さんは、社会保障や共済、協同組合論などがご専門です。
TPPの入り口ですでに、保険や共済をめぐる大きな動きが起きている。
私は、日本の共済の仕組みがアメリカからの圧力により壊されそうだということを知って、共済研究会というのに参加させてもらったのですが、本間さんはその代表のお一人でした。
それが契機になって、私も共済について少し学ばせてもらいました。
以来、ささやかなお付き合いがあります。
とても刺激的な論文なので、共済研究会などでも話題になり、話し合いが始まっているかもしれないと思い、もしそうした場があれば、参加させてもらおうと思い、本間さんに電話しました。
ところが、残念ながらそういう場はまだ生まれていないようです。
であれば、ぜひとも、湯島で一度、話し合いの場をつくりたいと提案させてもらいました。
残念ながら、大学の学期末のため、春になってからということになったのですが、本間さんはかなり疲れているようでした。
疲れの原因は、たぶん、本間さんの主張にきちんと耳を貸す人がいないということではないかと思います。
本間さんは、中途半端に現状を憂いているのではありません。
誠実に、真剣に、TPPの弊害を説き続けているのですが、それに呼応して行動を起こす人がなかなか出てこないことに危機感を高めているのです。
本間さんの嘆きは、以前からも少し感じていましたが、今日の電話では、それがさらに高まっているようでした。
世間の流れに迎合すれば疲れないのでしょうが、本間さんは、そういう人ではないのです。
だから私は好きなのです。
それで私もこの論文を一人でも多くの人に読んでもらう努力をしようと決めました。
それで、こんな記事を書いてしまったわけです。
もちろんTPP賛成の方もいるでしょう。
しかし、そうした人にも、ぜひこの本間論文を読んでほしいと思います。
特に、協同組合関係の人に読んでほしいです。
もう書店にはないと思いますが、図書館でぜひ読んでみてください。
とても考えさせられる論文です。
ちなみに、この論文の特徴は、抽象的にTPP反対を唱えているのではありません。
上記引用文の最後にあるように、「TPPの入り口ですでに、保険や共済をめぐる大きな動きが起きている」という事実を実証的に示してくれているのです。
そしてそれは、このブログで私が時々書いている、「産業のための経済」と「生活のための経済」の違いを示唆してくれているのです。
本間さんを囲むサロンは春には企画したいと思います。
関心のある方は、ご連絡ください。
案内を送らせてもらいます。
もう一つだけ、本間さんの論文から引用させてもらいます。
人の世である限り、人びとの協同と支え合い、相互扶助は不可欠である。
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