■経済成長と格差
昨日、日本地域開発センターの50周年記念の交流会に参加しました。
パーティの最初にあいさつされたのが、伊藤光晴さんでした。
と言っても、ご存じない方も多いでしょう。
市民社会派の経済学者で、もう80代の後半のはずです。
マルクス経済学にも近代経済学にも偏ることなく、さらに狭義の経済学にも閉じこもることなく、技術や経営や社会にも視野を広げて議論し、しかもとてもわかりやすい本を書かれています。
私に、経済学に関心を持ち出すきっかけを与えてくれたおひとりです。
残念ながら直接お会いしたことはなく、正直、今はもうお名前さえすっかり忘れていました。
日本地域開発センターは、フォード財団と日本の経済同友会の資金提供を受けて、活動していた組織ですが、創立50周年ですから、できたのは1960年代半ばでしょう。
私が大学を卒業したころです。
当時、伊藤さんも、日本地域開発センターに関わっていたようですが、その回顧談を少しだけしてくれたのです。
そこに、当時は、格差を解消することで経済成長が実現できた、という話がありました。
ハッとしました。
経済成長は格差を拡大することで成り立つと、最近は思い込みすぎていました。
交流会の後、若い世代のアントレプレーたちにお話しさせてもらう予定でしたが、その大きな筋立ての一つが、脱経済成長論でもあったからです。
1950~60年代は、たしかに格差是正と経済成長が共存していました。
生活を豊かにする経済成長というのもあるわけです。
とすれば、経済成長と格差の問題は、もっとしっかりと考えなければいけません。
言い換えれば、同じ「経済成長」という言葉でありながら、たぶん、その意味は違ってきているのです。
いや「経済」の概念それ自体がやはり違っているのでしょう。
昨夜の私の講演は、そうした経済学が全く変質してきたことも筋立ての一つだったのですが、もう少し整理する必要がありそうです。
伊藤さんは、格差是正が経済成長につながることに関して、フォード財団の思想にも一言だけですが、言及しました。
フォードが自社の社員が自動車を買えるように、日給を倍増させた話です。
ところで、もう一人、お話しされた98歳の某長老は、名古屋のオリンピック招致を止めるために尽力した話をしてくれました。
当時は、経営者も経済学者も、みんなまともだったように思います。
どこでどう流れは変わったのでしょうか。
経済成長批判よりも、格差是正につながる経済成長論を考えなければいけません。
やはり時には昔の人の話を聞くのもいいものだと思いました。
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