■統計上でさえ3万人前後の自殺者がでる社会
12日の「組織で働く人の自殺を考える」ラウンドテーブルミーティングの続きです。
私自身の関心は、自殺防止というよりも、自殺に追い込まれてしまう人が、毎年、統計上でも3万人前後いるという社会のあり方やそうした社会をつくっている私たちの生き方にあります。
発表される統計では、自殺者の数は減少してきていますが、実態はそう変わっていないどころか、むしろ深刻化しているような気もします。
自殺だけが問題ではなく、「自殺に追い込まれるような状況」こそが問題なのです。
そこを間違うと問題が摩り替えられるだけに終わりかねません。
今回、従業員支援プログラム(ESP)を企業と契約して、従業員のメンタルサポートや自殺防止に取り組んでいる会社の代表の佐久間さんに問題提起してもらいました。
ESPは契約した企業の従業員であれば、会社には全く知られることなく、直接に契約会社の用意するカウンセラーにすべての問題の相談に乗ってもらえます。
仕事の話だけではなく、家族の相談ももちろん大丈夫です。
相談場所も従業員が指定できるそうです。
佐久間さんによれば、相談してきた人の自殺はこれまで皆無だそうですが、契約している会社でも従業員が自発的に相談してきてくれなければ対応できません。
ところが日本の企業の場合、米国などと違い、従業員の相談率が低いのだそうです。
5%未満のようです。
その理由は、もし相談したら会社に伝わるのではないかという心配があるからではないかと、佐久間さんは言います。
もちろん佐久間さんの会社ではそれは絶対ありえませんが、日本の場合、従業員は会社を信頼していないのかもしれません。
実にさびしい話です。
自殺を図った場合、家族から「自殺」という事実は隠してほしいといわれることも多いという話はよく聞きます。
日本では、「自殺」はまだ「事故死」とは違って、「不名誉なこと」なのです。
しかし、好き好んで自殺する人はほとんどいないはずです。
追い詰められて、自殺してしまうとしたら、個人の問題ではなく社会の問題です。
問われるべきは個人ではないでしょう。
問題の設定を間違えてはいけません。
統計上でさえ3万人前後の自殺者がでる社会。
それどう考えてもおかしい社会だと私は思っています。
そして、その社会をつくっている私たち一人ひとりが考えなければいけないことだと思います。
そこから、私たちにとって、気持ちよく暮らせる社会のあり方が、見えてくるかもしれません。
多くの人が多くの時間を費やす会社でも、できることはたくさんあるはずです、
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