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2014/06/25

■年金生活者株式会社のヴァイタニードル社

ケイトリン・リンチの「高齢者が働くということ」(ダイヤモンド社)を読みました。
これはアメリカで80年も続く家族的経営のヴァイタニードル社の紹介です。
著者のリンチは、その会社で実際に働くことまでやって、このドキュメンタリーを書き上げました。
同社は、2008年制作の映画『年金生活者株式会社』で全世界に紹介され、大きな話題になった会社です。

ヴァイタニードル社は販売部門と向上に分かれていますが、その工場は40人のパートタイマーで構成されています。
しかも従業員の平均年齢は74歳、100歳近い人まで働いています。
勤務時間を決めるのは、従業員自身です。
もちろん会社を辞めるか辞めないかを決めるのも従業員です。

高齢者ですので、すでに年金受給者であり、メディケアという医療保険に自分で入っていたりしているので、会社側はその分負担は少なくなります。
ですから、一部には、悪名高いウォルマートのように、低賃金と年金や医療保障の公的費用低負担で高齢者を搾取しているのではないかという批判もあるようです。
そういう批判や捉え方は、従業員も社長もよく知っています。
社長のフレッドは、高齢の従業員を雇用しているのは、社会の利益のため、すなわち孤立している高齢者の健康への悪影響に対抗するためだと述べていますが、一方で、高齢者を雇いたいと考えるのは、自分が善人だからではなく、それがいいビジネスになるからだとも述べています。
従業員もそうした噂を知りながらも、フレッドがやっているのは搾取ではなく公共サービスだと言っています。

パートタイムの、しかも作業効率が低く勝手な勤務時間にしても、不都合なく生産活動が行われているのは、それなりの仕組みや従業員の意識があるからです。
それは本書を読んでもらえばわかります。
2つだけ、そうしたことを示唆する、従業員たちの間で語られている言葉を紹介します。
「フレッド(社長)のために働こう」
「もし働くのをやめざるを得なくなったら、ローザはきっと死んでしまう」
ローザは、同社の最高齢の女性で、本書が書かれた時には99歳でした。
この2つの言葉が、ある意味ではヴァイタニードル社のすべてを語っているかもしれません。

『年金生活者株式会社』であるヴァイタニードル社の魅力が伝わったでしょうか。
私は、そこに、これからの企業のあり方、そして私たちの働き方にとっての大きなヒントを感じます。
長くなったので、もう一度だけ書くようにします。

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