■同じものに触れても、人は違ったものを見ています
先週末、企業の経営幹部の人たちとこれからの企業経営について話し合いの合宿をしていました。
もう20年ほど、毎年4回、こうした合宿を続けています。
そのおかげで、企業の実相の変化を感じさせてもらっています。
正直に言えば、企業の劣化を痛感しています。
その前の2週間の週末は、NPOの集まりに参加させてもらっていました。
いずれも現場重視の誠実なNPOで、双方とも設立10周年を記念した公開の集まりでした。
NPOの世界も、もう20年以上、関わらせてもらっています。
そこでも大きな変化を感じています。
これも正直に言えば、大きな危うさを感じています。
その2つの世界は、大きく違います。
しかし、いずれにおいても、大きなベクトルは感じます。
それは「お金の役割」が大きくなってきていることです。
25年前に会社を辞めた時に、私が念じていた方向とは大きく違います。
どういう社会がいいのかは個人の価値観に寄りますから、私がとやかくいうことではありませんが、私の好みではありません。
そうした私の価値観のせいか、経済的には格段に恵まれているであろう企業の人たちよりも、NPOの人たちの方が幸せそうに感じます。
少なくともどちらの人たちの集まりのほうが居心地がいいかと言えば、後者です。
それも、あんまりしっかりしていないNPOのほうが、私は落ち着きます。
先週、若いビジネスマンと話していて、今はいいけれど将来が不安だと言う発言に驚いたことがあります。
さらに驚いたのは、将来が不安だから貯金をしていると言うのです。
驚く私の方がおかしいと思われるかもしれません。
しかし、お金では幸せも安心も買えないのです。
先週末の企業の人たちの話し合いでも、年収が200万円にも満たなければ生活はみじめになってしまうと言われました。
むしろ私は収入が高くなると生活はみじめになりやすいだろうなと心配していますが、人によって見えている風景は全く違っているようです。
企業の皆さんとの合宿では「里山資本主義」の話題を少しだけしました。
14人の人がいましたが、ほとんどの人が知りませんでした。
その本を読んだけれど、極論だと思って読み流していたと、後でメールをくれた人もいました。
言葉は流行っているが、「極端な特殊事例」だと考えるのが、「知識人」の特徴です。
同じものに触れても、人は違ったものを見ているのです。
さらに言えば、その情報を裏づけてくれるメディアの影響も大きいです。
昨夜、NHKで里山資本主義の番組をやっていたので、共感者が増えたことでしょう。
もし企業の人たちとの話し合いが1週間先であったら、反応は違っていたかもしれません。
私たちの考える判断基準は、そんなものなのです。
何を見るかを方向付けるのが、学校教育や企業の人材育成の役割です。
マスコミの影響が、それに輪をかけて大きいでしょう。
そういうことを、最近ますます強く感じています。
社会は壊れてきているのではなく、誰かによって壊されてきているのです。
社会が壊れれば、そこで生きている人もまた、壊れます。
壊れないまま、人生を全うしたいと、最近思い出しています。
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