■働くことには給料よりももっとたくさんの意味がある
ヴァイタニードル社のつづきです。
社長のフレッドは入社したいといってくる人たちについて、ほとんどの人が、「自分が役立っていることをもう一度実感したいとか、単調で寂しい老後の生活から抜け出したい」と考えていると話しています。
「高齢者が働くということ」の著者リンチは、働くことには、支払われる給料よりももっとたくさんの意味がある。働くことによって、社会とかかわることができ、自分が社会に貢献している感覚が得られ、家庭内のゴタゴタから一時逃避することもできる、と書いています。
ヴァイタニードル社の従業員の言葉〈表現は変えています〉を紹介しましょう。
「労働とは人に尊厳を与え、社会とのかかわりを与えるものだ。高齢者がテレビ漬けになっておかしくなってしまう世の中ではなく、人々が年齢を重ねても富の創造に参加し続ける世の中を、そしてそうすることで人々が経済全体を支え、かつそれぞれに経済的・心理的な利益を得られる世の中になってほしい」
「世の中の企業のCEOは、フレッドとは違って従業員のことなど気にかけておらず、自社の株価の上昇だけを望んでいる」
以前勤めていた会社では、従業員は名前のない「匿名の存在」だったが、この会社は家族のようにみんなに名前がある、というような話をしている従業員もいます。
いうまでもなく、社長も「社長」などと呼ばれることなく、「フレッド」と呼ばれているわけです。
働くものたちにとって、「働くことの意味」や「職場の位置づけ」を考えさせられる言葉です。
経営者にとってはどうでしょうか。
社長のフレッドは、高齢の従業員たちは仕事に強い倫理感を持ち、頼りになり、会社が当てにできる経験も豊富だと言っています。
たしかに作業効率は低いかもしれません。
しかし、それを組織として解決し、逆に強みにしていくことこそが、経営です。
この言葉からわかるように、フレッドは優秀なビジネスマンでもあるわけです。
そうしたフレッドが経営しているヴァイタニードル社に出資を要請してきた人もいるそうです。
メディアの見方は、さまざまですが、ヴァイタニードル社の労働をたびたび「セラピー(治療)」と形容し、従業員たちは「同じボート」にこのまま一緒に乗っていくことを高く評価する人たちだという捉え方も少なくないようです。
たしかに、ヴァイタニードル社で働いているから生きていられるんだと認めている従業員も多いようです。
「働く」とは「傍(はた)を楽(らく)にする」だけではなく、「自分をも楽しくする」ものなのです。
最近の日本人の多くが、働くことを忘れているのが残念です。
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