■節子への挽歌2509:人間である生き方
節子
生命誌館館長の中村桂子さんが書いた「科学者が人間であること」を読みました。
1点を除き、その内容には心から共感しました。
と言うよりも、私が考え行動していることとほとんどすべて重なっていました。
多くの人に読んでほしくて、最近は会う人ごとに勧めていますが、あまり読んでもらえそうもありません。
中村さんのことは、以前、節子に話したことがあります。
もう30年以上前のことだと思いますが、私が東レにいた頃です。
中村さんは当時三菱化成関係の研究所にいたはずです。
ある会で、中村さんの講演を聴く機会がありました。
もう内容は覚えていませんが、「ライフ」に関するお話が私の心に響きました。
それでどうやったのかわかりませんが、中村さんのところに会いに行きました。
そこですごく感動した話がありました。
中村さんが、帰宅したら子どもの靴下の破れた穴を繕うのですよ、と話してくれたのです。
他のことは何も覚えていませんが、その話には感激し、帰宅するなり節子に話したことを覚えています。
今回、中村さんの本を読んで、そのことを思い出しました。
中村さんは、その頃から「人間」だったのです。
私が会社を辞めた時にも、挨拶状を中村さんに出しました。
それで電話をもらった記憶がありますが、以来、お付き合いは途絶えています。
何しろ私はどんどん社会から離脱してきていましたから。
しかし、今回、この本を読んで反省しました。
社会から離脱せずとも、「人間」であり続ける事ができたのだと思い直したのです。
私はただ、楽な道を選んだだけだったのかもしれません。
中村さんは心から尊敬できる人です。
しつこいですが、一点だけ気になることはありますが。
節子もまた「人間」でした。
だから私は好きでした。
節子が靴下を繕っている姿は見たことはありませんが、そういう生活感がありました。
帰宅すると、素朴な生活の雰囲気を、私はいつも味わえていたのです。
25年間の会社勤めの後、私は会社を辞めて、節子と一緒に生活起点の生き方を始めました。
お金は一挙に減りましたが、生活は一挙に増えました。
世界が変わりました。
すべては節子が一緒に支えてくれたおかげです。
その生き方が間違っていなかったことを、中村さんの本で改めて確信できました。
今ここに、節子がいないのがとても残念ですが、私ももっと「人間」であり続けようと思います。
いつかまた中村さんにお会いできるでしょうか。
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