■節子への挽歌2570:人は関係性の中で育っていく
節子
昨日、湯島で、小児外科医の松永さんを中心にしたサロンを開きました。
時評編などにも書いていますが、松永さんは昨年、「運命の子 トリソミー」という本で小学館ノンフィクション大賞を受賞した方です。
その本は、私のホームページでも紹介させてもらいましたが、短命という定めを持った男の子を授かった家族の物語です。
松永さんは、その家族との出会いの中で、命とは何かを考えていきます、
そのご自身の体験に沿って、すばらしいお話をしてくれました。
いつもはゲストが話し終わると、すぐに発言が出るのですが、今回は話の重さからかしばらく沈黙があったほどです。
私は、松永さんの紹介で、「こんなお医者さんがいるのだと驚きました」と、ついつい話してしまいました。
私が考える「本当の医者さ」です。
時評編に、少し医療改革のことを書きましたが、書いているうちに、節子の2人の主治医のことを思い出しました。
人は関係性の中で育っていきます。
18トリソミー(染色体異常)の朝陽ちゃんの家族は、たぶん朝陽ちゃんとすでに一体になっているでしょう。
祖母は、最初は怖かったそうですが、今は大の仲良しのようです。
重度の障害児を授かった両親は驚きと怒りを感ずるようですが、時間とともに、それを受容し、自分の一部にしていきます。
つまり関係性の中で、人の生は営まれているのです。
節子との関係性が、私という人間をつくりだしたように、人は一人では生きていらずに、誰かと生を分かち合うことで、「自分」を形成していきます。
たとえどんな人であろうと、関係が育っていくと、自分の一部になってしまいます。
最近問題になるDVやストーカー問題には、そうした悩ましさがあります。
また喪失体験による自己破綻も、そうしたことの結果です。
松永さんのお話を聞いていて、節子との関係性を思い出していました。
もはや私には、自分を作り直す気力はありません。
最後まで、節子と一緒に、その関係性を引きずりながら、生きていこうと思ます。
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