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2014/09/12

■小さな村の大きな経済

BS日テレで毎週放映されている「小さな村の物語 イタリア」は、私の好きな番組の一つです。
http://www.bs4.jp/document/italy/
もう180回を超えていますが、毎回、実に新鮮な気付きを与えてくれます。
登場する人たちの生き方は、みんな実に豊かです。
日本でも同じような番組ができるのではないかと思ったことがありますが、たぶん180回は続けられないような気がします。

一番新しい181回目はサルディニア島のレーイが舞台です。
毎回、そこで暮らす住民が主役です。
冒頭に、そのレーイ村の全景が映し出されます。
広い平原を見渡す丘の中腹にある小さな村です。
日本であれば、限界集落とか過疎集落にされてしまうようなところかもしれません。
しかし、遠くから見ても絵になる集落です。
住民たちは野山を耕し、家畜を飼い、放牧をして暮らしています。
たぶん会社などはない農村です。
今回に限らず、毎回そんな集落が舞台なのですが、そこでの暮らしはうらやましいほどに人間にあふれています。
今回の主役の一人は、65歳の酪農家のピエートロです。

ピエートロは50歳過ぎまで学校の先生でした。
しかし、その傍ら、家の酪農を手伝ってきました。
そして、早めに学校を退職して、家業の酪農を本業にしたのです。
ピエートロは、学校の先生の仕事の傍ら、家業を手伝っていた。
そして、たぶん子育てが終わったころに、家業を継いで、好きな酪農を始めたのです。
ちなみにピエートロは、子供のころから牛の乳搾り手伝っていました。
酪農は、生活そのものに深くつながっていたのです。
いささか小難しく言えば、ピエートロはマネタリー経済の仕事とサブシステンス経済の仕事をずっとやってきて、いまは後者の仕事を生活にしているということです。

マネタリー経済の世界と違って、サブシステンス経済の世界では、必ずしもお金は必要ではありません。
お互いに手伝い合うことで、事々交換がなりたつのです。
同じ村で羊を飼っている知人が、手伝いに来ていましたが、たぶん彼もまた手伝いに行くのでしょう。
事々交換は仕事だけではありません。
お互いの家で、自家用のパンを作る時には、女性たちが集まります。
ピエートロ家では2か月分のパンを一気に作るのですが、近所から3人の助っ人が来ていました。
家によってパンの大きさや作り方も違うのだそうですが、長年の付き合いで、みんなお互いの家のパンのことも知っているようです。

もう一人の主役は85歳のアンジェラですが、彼女の場合はこうです。
若くして夫を亡くしたアンジェラは、女手ひとつで娘を育ててきましたが、その忙しい合間に野草のつる草で籠を作るのが趣味です。
その籠の作品がたくさんありました。
お金が必要な時には、それを売ってお金を得たそうですが、お金が必要ない時には、売りません。
ですから自宅にたくさんの籠があるのです。
別に使ってはいませんが、苦労して作ったのだから、売りたくないと言うのです。
たぶんお金はあまりないでしょう。
考えさせられる言葉です。
彼女も保存食を作っていましたが、材料の一部は野草です。
自然ともたぶん、事々交換、あるいは物々交換しているのです。
もちろんそこではお金など媒介にしていないでしょう。

こういう暮らしぶりを見ていて、はっと気づきました。
なんという「大きな経済」を彼らは生きているのだろう。
それに比べて、昨今の私たちはなんと小さな経済に生きているのだろうか、と。

イタリアは一時期、国家財政破綻などと言われた時があったような気がします。
しかし、破綻が問題のなったのは、マネタリー経済の話で、国民の生活はその時も豊かだったのでしょう。
経済の豊かさと生活の豊かさは、全く別物なのです。
本当に生きていれば、それに気づくはずです。
お金などなくても、ピエートロもアンジェラも、豊かな暮らしを守れるでしょう。
人や自然や大地に守られているからです。

しかし、日本のように、金銭にあまりに依存した生活では、そうはいきません。
グローバル経済は、実に矮小化された経済なのだと、この番組を見ていて、気づきました。

そういえば、この番組のプロデューサーの田口和博さんが、日伊協会の会報に「小さな村の大きな人生」というエッセイを連載しています。
「大きな人生」。
これも、私たちがいま、忘れてしまった生き方かもしれません。

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