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2014/09/23

■節子への挽歌2579:カサブランカの香り

お彼岸なので、娘が節子にカサブランカを供えてくれています。
カサブランカがいくつも開花していて、部屋中に香りが充満しています。
私もこの香りがとても好きです。
節子の葬儀にも、斎場に頼んでできるだけカサブランカを増やしてもらったのを思い出します。

いつもはお墓にも、いわゆる仏花ではなく、節子の好きそうな花を選んでいくのですが、お彼岸の時には両親もいるので、菊の花などの和花の多い、ふつうの仏花になっています。
しかし、自宅の仏壇には、カサブランカがいいので、毎年、娘たちが供えてくれるのです。

このカサブランカの香りは、悲しさも伴っています。
節子がいなくなってから、わが家にはこの香りが充満していました。
そこに包まれての期間が長かったので、いまもそれを思いださせられるのです。
節子がいなくなってからの1年は、私はあまり生きている実感のないまま、この香りに閉じ込められていたような気さえしてきます。
だから、この香りは心身を安らかにするだけではないのです。
思い出しても思い出せない1年の気分を感じるのです。
にもかかわらず、カサブランカの香りは好きです。

香りは、忘れてしまった人の記憶を思い出させます。
今やわが家からは、節子の香りはほとんどなくなってしまいました。
8年目ともなれば、それは仕方ありません。
それに節子は、特別の香水を使うような人ではありませんでした。
ただただ質素に、素直に、生きていただけです。
これといった特別の香りがあるわけではない。
節子を思わせる香りが、カサブランカになってしまったのは、少し残念ではあります。

ちなみに、私がカサブランカが好きなのは、香りだけではありません。
ユリの白い花も、大好きなのです。
そこに、節子を感ずるからでもあります。

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