■エボラ熱とイスラム国
いま世界の国家は2つの危機に直面しています。
エボラ出血熱とイスラム国です。
エボラ出血熱は国境を越えて、世界中に広がりだしていますし、イスラム国もシリアやイラクといった限定された地域を超えて、その脅威が広がっています。
エボラ熱を引き起こしている生物は人間ではないので、人間が勝手に線引きした国境などには無縁ですし、イスラム国もまた「国」を冠しているとはいえ、国境を越えたイスラム思想がその主体なので、国家概念を超えた動きになるのは当然です。
つまり、この2つは、まったく別物であるように見えますが、現在の世界の構造に対する異議申し立てという意味では同じものです。
そのためか、それに対する国家や人々の反応も、どこか似ています。
エボラ出血熱とのたたかいは、おそらく制圧できるでしょうが、イスラム国の制圧は無理ではないかと私は思います。
なぜなら、前者は人間全体の外への戦いであるのに対して、後者は人間同士の内なる戦いだからです。
前者は人間をつなげていきますが、後者は人間のつながりを分断化していきます。
心の中に宿る思想ほど、移り気なものはありません。
身体に宿るウィルスや最近も移り気ですが、思想は距離や時間を超越しているだけ扱いにくいのです。
近代国家という枠組みは溶融しつつありますが、加速されることは間違いありません。
ちなみに、規模の大きさから組織をランキングしていくと、上位100組織に関しては、ほぼ6割が企業、4割が国家と言われています。
企業組織のほうが国家組織よりも主役になっているといってもいいかもしれません。
しかし、それとはまったく違った組織形態が生まれつつあるのかもしれません。
人間を宿主として位置づけ、そこに宿るものによって構造化するような世界も、必ずしも絵空事ではなくなってきました。
思い出すのは、ハインラインの小説「人形もどき」です。
50年前に読んだ小説が、今まさに現実化しつつあるような気がしてなりません。
恐ろしいのは、この2つの流れがつながることです。
すでに、アメリカではエボラ出血熱の疑いのある人たちが、犯罪者のように扱われたという報道もあります。
そう遠くない先に、つながってしまうことの恐ろしさを感じます。
昨日の記事と同じ結論になってしまいました。
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