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2014/11/28

■節子への挽歌2644:「おみおくりの作法」

節子
久しぶりに映画の試写会に行ってきました。
映画は「おみおくりの作法」。原題は「Still life」、静かな人生です。
日本語のタイトルには大きな違和感がありますが、それはそれとして、心に残る作品です。
ヴェネチア国際映画祭などで数々の賞をとった話題の作品だそうです。

舞台はイギリス。
孤独死した身寄りのない人を弔う仕事を誠実に取り組んでいる44歳の民生係ジョン・メイが主人公です。
ジョンもまた孤独です。
主人公のジョンのセリフはあまりなく、サイレント映画のようでもあります。
しかし、それにもかかわらず、ジョンの気持ちは痛いほど伝わってきます。

筋を明かすわけにはいきませんが、私は途中からもう涙が止まりませんでした。
書きたいことがたくさんあるのに、書けないのが残念です。
でも、セリフのひとつ二つは書いてもいいでしょう。
といっても、何しろジョンはほとんどしゃべらないので、セリフはジョンのものではありません。
例えば、「黙ったまま隣り合っていられる相手」がいることの幸せが語られます。
例えば、「彼の過去は知らないのに1日で離れられなくなる」と愛が語られます。
例えば、「彼は命の恩人だ、あの山で俺を見捨てないでくれた」と友情が語られます。
そして、セリフのないジョンのStill lifeが、人間が生きることの哀しさを教えてくれます。
そして、それは喜びにもつながることを。
そして、誠実とはなにかも。

20年前に観たギリシア映画「永遠と一日」に負けずに涙が出ました。
今回も、ずっと節子が隣にいる気持ちで観ていました。
あの時と違って、嗚咽は堪えられましたが、沸き起こった思いのやり場には困りました。
「黙ったまま隣り合って」いてくれる節子が無性に恋しくなりました。

来年の1月からロードショーが始まる映画です。
多くの人に観てほしい映画です。
http://bitters.co.jp/omiokuri/
公式サイトに予告編があります。

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