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2014/12/30

■「差別する意識」が生み出す市場

12月の後半に開催した3つの集まりに共通したテーマを感じました。
集まりの大きなテーマは「自殺」「家族」「認知症」だったのですが、いずれにも共通していたのは、私たちが無意識にもっている「差別する意識」とそれを生み出す「制度」でした。
そうした意識や制度は、気づかないうちに、私たちの生活の中にどんどんと広がっています。
そう強く感じたのは、昨日開催した認知症予防関係の話し合いでした。

認知症の定義は、いろいろとあるのでしょうが、人はある年齢になると急速に認知度が低下するそうです。
認知度の低下の大小により、認知症の恐れがあるとか、軽度の認知症、重度の認知症とされるのでしょうが、その定義はかなりあいまいなのだろうと思います。
高血圧症の範囲が医療界の都合で変えられているのと同じかもしれません。
しかも、それは社会の仕組みによっても大きく変わってくるでしょう。
3世代とか4世代が一緒に暮らす大家族制度、あるいは隣近所が支え合って暮らすような開かれた家族制度の場合は、認知度が低くなっても、「病気」扱いされずにすまされていたでしょう。
逆に昨今のように単世代家族中心で、しかも家族が自閉化しがちな社会においては、軽度の認知力低下でも「病気」扱いされることで、隔離されていく傾向が強くなるでしょう。
加齢とともに認知度が低下するのは、それなりの生命的理由があると私は思っていますが、そうした生命の摂理さえ病気にされてしまうのは、いささか悲しい気がします。

もっとわかりやすい例は、精神病です。
日本では精神病が理由で入院している人は非常に多く、全入院患者の4人に1人が精神障害者だそうです。
精神病院は、今でもなお「隔離装置」となっているように思われます。
ある集まりで、座敷牢に閉じ込められていた昔に比べればよくなったのではないかという話になりましたが、これもたぶん正しくはないでしょう。
座敷牢が広がったのは、明治になってからではないかと思います。

水俣病の語り部、石牟礼道子さんのことを書いた本を読んでいたら、若松英輔さんのこんな文章が出てきました。

水俣病よりずっと前から石牟礼道子は豊かな非情の世界で生きていたのである。
人間であるものと人間でないものの境界が溶け合っている世界である。
幼い彼女の傍らには神経殿(しんけいどん)と呼ばれる老女がいて、石牟礼道子はいつも神経殿を通して言葉を身につけていったはずだ。
神経殿というのは今で言う精神病者のことで、その蔑称とも愛称とも分かちがたい呼称でたがいを引き寄せるようにして人びとは混じり合っていた。
そこは障害者/健常者や正常者/異常者といった境界を社会的規範が押しつけてくる世界ではなかった。
私が子どもの頃は、まだそうした「多様な人たちが一緒に暮らしていた社会」だった気がします。
父の実家に疎開していたころに、その村にやはり神経殿のような存在がいたような記憶がうっすらと残っています。

健常者とか正常者とかいう言葉は、私には理解しがたい言葉ですが、健常や正常の範囲がどんどん狭まっていることは間違いないでしょう。
そこからはみ出した人は、医療や製薬やケアサービスの顧客になっていきます。
そうして経済成長に貢献する存在へと仕上げられていくわけです。
私には、忌まわしい動きです。
なんでも市場化してしまう、最近の制度設計の発想には、恐ろしさを感じます。
そのうち、すべての人は病人にされ、薬の消費者になっていくでしょう。
いやすでにもうほとんどそうなっているかもしれません。

人はそれぞれに違うのだという、当然のことに気づくことがない限り、こうした動きは止められないでしょう。
「違い」を障害や病気などと考えることはやめようと思っていますが、自分の心身の中にある「差別する意識」を克服するのは難しいものです。

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