■価値のつくり方と価値の捉え方
東京駅開業100年を記念してJR東日本が限定販売した記念スイカは、あまりの混雑に途中で販売を停止せざるを得なかったという事態になりました。
死傷者が出なかったのが幸いですが、一時はかなり危険な状況だったようです。
予定していたスイカの半分は販売されたそうですが、すでにネットでは、そのスイカが価格の10倍以上で売りに出されているそうです。
まさにお金に支配された現代の実相を示しています。
「価値」の捉え方は、いろいろとあります。
世界最初のバブルは、17世紀オランダのチューリップバブルと言われます。
オスマン帝国から輸入されたチューリップの球根が人気を集め、価格が高騰し、チューリップ投資が過熱化したのです。
チューリップの球根が、通常時の100倍以上にまでなったといいます。
チューリップ球根が投資の対象とは理解に苦しみますが、似たようなことはいまもよく起こっています。
それが起こるのは、たぶん金銭が経済の基軸になったからだろうと思います。
柳宗悦は、価値とは永遠と結びつく絶対的超越につながっていないといけない、と言っていますが、いまや価値は損得の対象になってきています。
こうした風潮もまた、金銭基軸の社会がもたらしたものでしょう。
今回の記念スイカですが、お祝いなのですから無限に売り出すのが本来的なあり方です。
多くの人で喜び合うことができましたし、こんな混乱も起きませんでした。
しかし、そこに「金銭価値」を無理につくりだそうとして、15000枚という数量を設定したのです。
つまり「作られた希少価値」ですが、損得価値に目がくらんだ人たちは、それを「価値」だと勘違いしてしまうわけです。
まさにバブルと同じ構造が、生み出されるのです。
そして、本来であれば、お祝いとしての記念の価値は失われてしまい、金銭価値が覆ってしまうわけです。
今回の騒動は、いまの日本社会が、どうやって「価値」をつくりだすのか。また人々は何をもって「価値」と考えているのかを教えてくれています。
金銭価値であれば、その気になればいかようにも創りだせます。
最近の企業経営や地域起こしの世界で言われている「ブランディング」「ブランド価値」も、金銭価値で覆われています。
時間をかけて熟成されるべき「ブランド価値」が、巧妙なマーケティング技術で促成される事例を見ると、実にむなしくなります。
そういう動きの中で、私が考える「価値」はどんどん消滅して言っているのが、とても残念です。
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