■恐ろしいのは無責任な自粛と自粛のない無責任さです
今朝の朝日新聞に「政治家のネタ、NHKで没」というコラム記事が載っていました。
ちょっと気になる記事がでていました。
お笑いコンビの爆笑問題がTBSのラジオ番組で、NHKのお笑い番組に出演した際、事前に用意していた政治家に関するネタを局側に没にされたことを明らかにしたのだそうです。
新聞記事によれば、爆笑問題の田中裕二さんが「全部ダメって言うんだよな。あれは腹立ったな」と語り、それを受けて、太田光さんが「プロデューサーの人にもよるんだけど、自粛なんですよ。これは誤解してもらいたくないんですけど、政治的圧力は一切かかってない。テレビ局側の自粛っていうのはありますけど。問題を避けるための」と話し、田中さんは「色濃くなってるのは肌で感じるね」と応じたようです。
爆笑問題のおふたりには、自粛させるということこそが圧力の存在だということへの認識はないようです。
それに、自粛した人の言い分に従うこともまた自粛であるという自覚もないようです。
いずれも商業主義的な世界でのせめぎ合いでしかありません。
爆笑問題のような、典型的な権力寄生型の道化師的御用芸人は、権力にとっては好都合な存在でしょう。
これについて、NHKの籾井会長は8日の定例会見で、一般論として「個人名をあげて、色々お笑いのネタにするのはちょっと品がないんじゃないか」と語ったそうですが、籾井さんと爆笑問題はきっと気が合いそうです。
それはともかく、パリでは、イスラム教を揶揄する風刺画を掲載した新聞社シャルリー・エブドが襲撃され、画家も含めて12人が死亡するという事件が起きました。
「表現の自由」への攻撃として、犯人たちは非難されています。
そういえば、少し前には金正恩暗殺を題材としたコメディー映画「ザ・インタビュー」に反発した北朝鮮がサイバーテロを起こしたと話題になりました。
これに対しても、表現の自由の侵害と世界的なキャンペーン活動が展開されました。
私は、表現の自由の大切さは十分に理解しているつもりですが、表現する側にも節度があって然るべきだと思っています。
テロを起こすのはよくありませんが、テロに駆り立てるのも、好ましくはありません。
いかに自由とはいえ、個人の尊厳を揺るがすようなことは許せませんし、それは私には風刺とは思えません。
権利を実行する人には、それなりの責任と覚悟が求められます。
シャルリー・エブド社は、言論の自由を守るためにこそ、自粛もできたはずです。
ただやみくもに批判し風刺すればいいわけではありません。
ふたつの事件は、正反対のように見えて、私には同じものに感じます。
恐ろしいのは無責任な自粛と自粛のない無責任さです。
| 固定リンク
「政治時評」カテゴリの記事
- ■湯島サロン「市会議員選挙に立候補して考えたこと」報告(2023.02.01)
- ■国家の安全保障のために政府には「機密」があってもいい、という「常識」(2023.01.26)
- ■「嘘つきは政治家のはじまり」にしてはいけません (2023.01.26)
- ■国会議員ローテーション制度に賛成します(2023.01.17)
- ■戦争をやめさせたいのであれば、戦争をつづける人に加担すべきではない(2022.12.22)
「マスコミ時評」カテゴリの記事
- ■You tubeを金儲けの手段にしてほしくありません(2023.01.25)
- ■「宗教2世」?(2022.12.09)
- ■数字が事実を覆い隠す社会(2022.09.11)
- ■国葬に関して思うこと(2022.09.01)
- ■「裏切られた自由」とベリングキャット(2022.08.09)
コメント