■イスラム国にどう立ち向かうか
イスラム国による日本人拘束事件は硬直状況に陥ってしまっているようです。
この事件が起きた時に、メアリー・カルドーの「新戦争論」を読み直したのですが、改めてカルドーの指摘が心身に響いてきました。
もしカルドーのいう「コスモポリタン・アプローチ」を取り入れていたら、9.11以降の世界の歴史は変わっていたように思います。
また今回の事件に対する対応も、別の道があったはずです。
日本政府は、相変わらずアメリカ依存の対応に終始しています。
カルドーは同書でこう書いています。
(「新しい戦争」においては、)恐怖と憎悪を蔓延させる戦略に対抗して、人々の「感情と理性」を育むという戦略が取られなければならない。日本政府の対応はどうでしょうか。
排除の政治に対して、包容の政治が行われなければならない。
ちなみに、カルドーの言う「コスモポリタン・アプローチ」は、「アイデンティティ・ポリティクス」と対比されていますが、決して、アイデンティティを否定しているものではありません。
カルドーの説明によれば、「地球規模で多様なアイデンティティが存在することを尊び、複数の相重なるアイデンティティを受け容れるとともに、むしろ肯定的なものと考え、そして同時に、全ての人間存在の平等と、人類の尊厳を尊重するため主体的に取り組む」ポリティクスです。
カルドーはまたこうも書いています。
コスモポリタン・アプローチは、紛争当事者の政治目標を受け容れてしまってはどのような解決策も機能しないことから、コスモポリタンな原則に沿って機能するような代替的な政治に基づいてのみ、正統性の回復が可能になるという前提に立っている。「イスラム国」という呼び方の是非がようやく議論されだしていますが、問題は「言葉」ではなく、その実体をどう捉えるかでしょう。
そして大切なのは、「代替的な政治」というビジョンと理念に基づいた対応ではないかと思います。
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