■ムスリム国家との関係の行方
イスラム国による日本人殺害予告映像が流れ、大きな問題になっています。
とうとうここまできたかという思いでいっぱいです。
この映像には、いささかの違和感がありますが、それはそれとして、日本ももう戻れなくなりそうです。
信頼関係は、構築するのは時間がかかりますが、壊れるのは瞬時です。
その瞬時が、まさに昨年の7月1日だったのかもしれません。
憲法学者の水島朝穂さんは、最近の著書(「立憲的ダイナミズム」)の中で、こう書いています。
彼(安倍首相)が「閣議決定」でやったことは、憲法の大原則である平和主義の根幹(首)を斬り落とす「憲法介錯」にほかならない。「憲法介錯」は、憲法解釈に欠けて言葉です。念のため。
内閣は、憲法に違反する内容の「閣議決定」を行ったのである。
これは「平成の7.1事件」として記憶されるべきだろう。
学者の言葉としては、いささか過激ですが、そこに水島さんの真情が感じられます。
「立憲的ダイナミズム」は数名の方が書かれている本ですが、そこにやはり憲法学者の君島東彦さんがこんなことを紹介しています。
NGOの一員として、12年間にわたってイラクの民衆に寄り添い、イラクの状況を見てきた米国の平和活動家、ペギー・フォー・ギッシュは、「イスラム国」に対する米国等の空爆はテロリズムを封じ込めることにはならず、むしろテロを拡散・強化することになるだろうと予想している。まさにそうなってきています。
戦いの構図の捉え方を変えなければいけません。
これも君島さんの論文の中に出てきていますが、イギリスの国際政治学者ケン・ブースは、われわれにとっての脅威は、敵国の兵器や軍隊ではなくて、互いに対峠する兵器システム、戦争システムであり、われわれの敵は、攻撃しようとするテロリストではなくて、テロリズムを選択肢にしてしまうような歴史的不正義であるといっているそうです。
人同士の戦いではなく、人とシステムの戦いだと考えると、世界の風景は違って見えてきます。
いささかSF風に聴こえるかもしれませんが、チャールズ・ライクが半世紀前に喝破した通り、敵は「システム」なのです。
問題の構造を見誤ると、事態はますます泥沼化するようで不安です。
もうひとつ気になることがあります。
2004年のイラク日本人人質事件で起こった「自己責任論」ブームのような動きが出なければいいのですが。
当時の日本の有識者たちの反応は、いかにも哀しくさびしいものでした。
たとえば、上坂冬子さんの発言を知った時には、衝撃的でした。
http://c-oizumi.doorblog.jp/archives/51313768.html
こういう風潮に加担しないように注意しなければいけないと改めて当時を思い出しています。
そして、私たちの政府が何をしているかを問い直す契機にもしたいと思っています。
これは決して、私と無縁な事件ではないのですから。
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