■マイナス面から考える経済
ロレンツォの話をもう一度書きます。
ロレンツォの趣味は狩りです。
畑の外側に、シカのために餌をつくって置いておくようなことをしながら、一方では時々、森に行ってシカを撃つのです。
これをどう理解すればいいでしょうか。
それぞれを別々に考えると矛盾するように思いますが、たぶんそれはセットのものなのでしょう。
つまり、関係性の中にはそれぞれにとってプラス面もあればマイナス面もあるということです。
どちらか一方にしか価値が流れない関係は、収奪か犠牲でしかありません。
それでは関係は持続しません。
持続する関係とは、プラス(利益)もマイナス(負担)も双方向に流れ合っている関係だろうと思います。
言い方を変えれば、プラスもマイナスも、同じコインの裏表かもしれません。
それは薬を考えればよくわかります。
どんな良薬も、マイナスの副作用を持たないものは、たぶんないでしょう。
効果が大きいものほど、劇薬性を持つものです。
昨今、私たちは商品のプラス面だけに着目しがちです。
つまり「プラス面しか考えない経済」になっているわけです。
「不足の時代」はそれでもよかったかもしれませんが、いまのような「過剰の時代」には、プラスの効用よりもマイナスの弊害の方が大切になってきているように思います。
関係性全体を、あるいは社会全体を、ホリスティックに考えていくことも大切です。
昨日も農業に造詣の深い方とお会いしたのですが、その人は農業は土から収奪するのではなく、土と一緒に育っていかないといけないということを話してくれました。
野菜を育てるために土の養分をもらう代わりに、土の健全性を維持し育てるために、土にもきちんとお返しをしていかねばいけないということです。
しかし、それは大量の化学肥料を施すということではありません。
それはますます土を死に追いやることになるからです。
化学肥料はプラス面もありますが、じわじわと土のいのちをむしばんでいく劇薬でもあるからです。
プラスだけを見てしまうと、マイナス面が見えなくなってしまうわけです。
農業に限らず、そうしたプラス面だけをみながらの経済が、あるいは生活が、社会を覆いだしているような気がしてなりません。
もっとマイナス面から考える経済があってもいいように思います。
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