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2015/02/06

■トリクルダウンの逆再配分機能

イスラム国関係の事件のために、しばらく「あたらし経済」シリーズをかけずにいましたが、また再開します。
なお、前回までのものは、下記にあります。
http://homepage2.nifty.com/CWS/neweconomy.htm

この間、「21世紀の資本」の著者のトマ・ピケティが日本に来て話題づくりをしていきました。
ピケティは、膨大なデータ解析の結果、格差の問題の根底に、「資本収益率は経済成長率よりも大きい」ことを発見し、このまま放置していたら格差は構造的にっさらに拡大すると指摘したのです。
何をいまさらという気もしますが、格差の拡大が資本主義さえも危うくするということを経済学者が明言したことには大きな意味があります。

前回も少し言及しましたが、たとえば「トリクルダウン」についてもう一度考えてみましょう。
トリクルダウンのイメージは、シャンペングラスをピラミッドのように積み上げ、その最上部のグラスにシャンペンを注いでいくと、あふれたシャンペンが次々と下の階層のグラスを満たしていくイメージでとらえていいでしょう。

ここには2つの問題があります。
第1は、グラスの大きさの問題です。
上部のグラスほど、大きいと考えていいでしょうが、そのためピラミッドとしては不安定な構造になります。
上があまりに大きくなりすぎると、ピクティが危惧しているように、社会は壊れます。
第2は、上から注ぎ込むシャンペンはどこから持ってくるのかという問題です。
現実には、シャンペンを作っているのは一番最下層なのかもしれません。
しかし、それでも限界はあるでしょう。
もしかしたら、シャンペングラスピラミッドの世界の外部から持ってきたのかもしれません。
ピラミッド内部の下層からすくいあげて、上から注ぐとすれば、結局、下層にいる人たちは、自らが生み出した富、あるいは保有している富の一部しか取り戻せないということです。
となれば、トリクルダウンとは、富の再配分システムではなく、逆再配分システムということになります。
さらに、ピラミッド内部ではなく外部から取り込んでくるとすれば、それは外部からの富の収奪でしかありません。
これもまた「南北問題」という形でかつて大きな問題になったことであり、世界を今のようにゆがめてしまった原因と言うべき、世界レベルでの逆再配分システムです。
さまざまな仕組みで、南北問題は覆い隠されてしまっていますが、実態はますます深刻化し、いま起こっている「イスラム国」問題の遠因も、ここにあるのかもしれません。

現場から吸い上げて、一部を現場に戻すという発想と仕組みは、さまざまな分野に展開されています。
企業の社会貢献活動もその一つです。
あるいは生活保護制度や自立支援制度も、その応用系です。
念のために言えば、それが悪いと言っているわけではなく、そうしたサブシステムをつくっていかないとシャンペングラスピラミッドは崩れてしまいかねないということです。
つまり、資本主義が壊れてしまうということです。
だとしたら、資本主義や社会を壊さないためにも、事態をきちんと捉えなければいけません。
ピケティへの関心が高いのは、そういうことを背景としているとも言われています。
シャンペングラスピラミッドが崩れ去って、一番困るのはピラミッドの上にいる人たちだからです。

トリクルダウンが、きちんと再配分機能を果たしていた時代はあったかもしれません。
しかし、少なくとも今の日本では、逆再配分の仕組みになっているように思います。
トリクルダウン発想で、安直な経済成長を考える経済学からは抜け出なければいけません。

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