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2015/05/19

■人が基本が金が基本か

私が関わっている経営道フォーラムの発表会がありました。
企業の経営幹部の人たちが、半年間、チームを組んで研究してきたことの発表会です。
今回は4つのチームが発表しました。

この発表会には、もう20年以上参加していますが、その時々の企業の置かれている状況が伝わってきます。
今回は私だけではなく、みんなにも伝わったようで、発表の後の話し合いなどでも、結局、企業経営は人が基本だ、という受け取り方がほとんどだったように思います。
そうなったのは、たぶんいまの企業から「人が基本」という文化が消えてしまっているからでしょう。
いまの企業は、「人が基本」ではなく「金が基本」なのかもしれません。

企業経営にとって重要な3つの要素は「組織」「戦略」、そしてそれを動かす「人間」です。
組織や戦略は論理で考えられますが、人は論理だけでは考えられず、そこに難しさとともに可能性があります。
これまでの経営の基本は、組織や戦略に人を合わせることでした。
しかし、社会や経済が成熟してくるにつれて、人を基軸にして戦略や組織を考えることが重要になってきています。
組織や戦略が人を使うのではなく、人が組織や戦略を活かしていくということです。
それはある意味では、経営における人間観を変えることであり、経営のパラダイムシフトを意味します。
しかし、そういう方向に企業経営を変えていくことは簡単ではありません。
最近の日本企業をみていると、グローバリゼーションによる競争激化を口実に、むしろ、組織や戦略に人を合わせるという姿勢を強めているようにさえ見えます。
そのため、社員の持っている力を十分に引き出すことにあまり成功していないような気がします。
その一つの現れが、企業で働く人たちのメンタルヘルスの問題の増加です。
それは、当人にとってはもちろんですが、企業にとっても、経済にとっても、好ましいことではありません。

私のところには、若者たちがよくやってきますが、会社に入ることに不安を感じている若者が多くなってきています。
彼らは、先輩などを通して、会社の実状をなんとなく感じているようです。
企業を選ばずに、NGOを選んだり、自分たちでソーシャルビジネスを起業するという若者も増えています。
いまの企業は、やる気のある若者たちにとって魅力的な場になっていないのかもしれません。
せっかく入社したのに、やめてしまう若者も少なくありません。
もし、人が企業を育てていくのであれば、これは大きな問題です。

そうしたことの背景には、非正規社員の増加や即戦力になる人材の中途採用の広がりなど、経営要素としての人材に対する企業の考え方が大きく変わってきているという事情があります。それでいいのかどうか。
その一方で、正規の社員の意識も大きく変わってきています。
そうしたことに、いまの企業はしっかりと対応できているのかどうか。

そうした視点で、4つの発表を聞いていましたが、言葉とは裏腹に、ほとんどの人がまだ「金を基本」としているような気がして、聞いていて滅入ってしまいました。
言葉を変えるのは簡単ですが、考えを変えるのはどうも難しいようです。

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