■「70年の不戦」その2:戦争を回避する方策
日本はなぜ70年も「不戦」でありつづけられたのか。
またこれまでも戦争に巻き込まれないためには何が必要なのか。
この問いに関しては、2つの考え方があります。
一般的に考えられるのが、攻められないために軍事的な抑止力を高めるという考え方です。
抑止理論から言えば、日本が70年も戦争から「無縁」だったのは、日米安保条約による米軍の「核の傘」のおかげだということになります。
そして、これからも、いま国会で議論されているような安保法制を積極的に整備し、日米軍事同盟をさらに強固なものにしていくということになります。
最近の日本人の多くは、意識的にではないとしても、そう考えているようです。
ダグラス・ラミスの「戦争するってどんなこと?」に、「2013年の朝日新聞による世論調査では、日米安保条約を支持する人は81%でした。一方、52%の人が憲法9条は変えないほうがいいと答えています」と紹介されています。
ここに、最近の日本人の本音が見えてきます。
憲法9条を守りたいなら、日米安保条約を支持することはありえないと思いますが、多くの人は軍事力による抑止力に依存しているのです。
しかし、軍事的な抑止力は両刃の剣です。
それは相手を信頼していないことの意思表示であり、いつでも攻撃できるという威嚇でもあるからです。
信頼されていないことを突きつけている相手を、信頼できる人はいないでしょう。
威嚇されて、心穏やかな人もいないでしょう。
売り言葉に買い言葉というような悪循環が始まりかねません。
それが1980年代までの国際政治でした。
その中心は、冷戦時代の米国とソ連の関係、つまり核抑止理論による軍拡競争に象徴されます。
自らの核戦力を増強することにより相手の核兵器使用を封じ込めていく発想(エスカレーション理論)は、結果としては相手の核兵力増強を引き起こし、両国は際限のない軍拡競争に陥ったのです。
そうしたなかで、逆に一方的削減(オスグッド理論)による軍縮という提案が出てきます。
いわゆる「段階的相互緊張緩和策」です。
まず自らが軍縮することにより相手からの信頼を高め、相手の軍縮を引き起こすという発想です。
提唱者のチャールス・オスグッドは、「一方的イニシアティブによる軍備削減」と書いていたと記憶していますが、「相手に対する信頼」に基づく、自発的な行動が出発点です。
キューバ危機は、ケネディとフルシチョフの信頼によって、回避されました。
ちなみに、オスグッドの主張は、日本でも「戦争と平和の心理学」として1968年に岩波書店から翻訳が出版されています。
いずれも自らの変化(軍拡、軍縮)が相手の変化を引き起こすと考えるわけですが、その変化の方向は全く違います。
そして、そこから出てくる結果も大きく違う。
自らの変化の方向が相手や状況の変化の方向を決めるのです。
世界は自らが変わる方向に変化していくものです。
威嚇か信頼か。
戦争を回避するには、どちらが効果的でしょうか。
私にはあまりにも簡単な問題なのですが、どうもそうでもないようです。
みなさんはいかがでしょうか。
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