■節子への挽歌2827:最後まで責任を持つ生き方
節子
節子もよく知っている杉本さんが、ご自分が立ち上げたNPOの最後の総会を湯島で開いてくれました。
NPO法人科学技術倫理フォーラムの「最後の総会」です。
科学技術倫理フォーラムは、杉本さんが立ち上げたNPOで、私も技術者でもないのに理事にさせてもらっています。
杉本さんもご高齢になったので、このNPOを再来年、解散することになり、その「最後の総会」だったのです。
総会は、いつも学士会館で行っていますが、今回は「最後」だというので、杉本さんが湯島で開催することを決めてくださったのです。
とてもうれしい心遣いです。
科学技術倫理の分野で、草分け的な活動をしてきた、志ある技術者のみなさんが集まりました。
とても刺激的な話し合いができました。
しかし、なぜNPOを解散することにしたのか。
ほとんどの人がかなりご高齢になったので、杉本さんは自分が責任を持てるうちに、NPOを解散し、最後の処理までご自分でやろうと決めたのです。
自分で生んだものは自分で責任を持って整理していくというのは、まさに杉本さんらしいやり方です。
後継者の組織を任せることも一時期考えられていましたが、杉本さんのおめがねにかなう技術者は残念ながら見つからなかったのです。
それに、杉本さんが立ち上げたNPOを引き継ぐほどの人は、そうはいないはずです。
最初解散の話を聞いた時、私は少し驚きましたが、すぐに納得できました。
杉本さんには教えられることが少なくありません。
今回も一つ教えられました。
人生の終わり方です。
というと、何か大袈裟ですが、人生の終わりに向けて、身辺整理することの大切さです。
私がほとんど持ち合わせていないものです。
私は、どちらかと言えば、明朝に野山で朽ち果てようと、それで良しとする生き方にあこがれがちなのです。
節子がいない今は、なおのことです。
娘たちにはさぞ迷惑なことでしょうが。
杉本さんは、NPOを完結させるだけではありません。
これまでの活動の総仕上げとして、ある論考を、500頁の大作にまとめる仕事に取り組むそうです。
私は少しだけその構想を聴かせてもらっています。
杉本さん独自に発見をまとめた論考です。
500頁は読むのが大変なのでもう少し短くしてほしいと軽口をたたいても、杉本さんは相手にしてくれません。
なにしろ杉本さんの人生の集大成ですから、杉本さんが500頁は必要だというのであれば500頁が必要なのです。
杉本さんは、そういう人なのです。
私の場合は一言で総括できそうですが。
私よりも一回り年上の杉本さんのエネルギーには驚嘆します。
節子が亡くなった時、どこで聞き及んだのか、すぐにわが家まで来てくださり、「奥さまも同士だから」と言ってくださったことを今も覚えています。
節子は、それを聞いて喜んだはずです。
私たちが杉本さんに出会ったのは、ハワイのキラウエア火山のツアーでした。
あの頃に戻れるものなら戻りたいです。
一緒に行った人たちはかなり鬼籍に入りました。
現役で活躍しているのは、茂木健一郎さんだけです。
当時、茂木さんはまだ高校生でした。
彼がこんなに大活躍するとは、誰もきっと思ってはいませんでした。
未来はだれにもわからないものです。
しかし、杉本さんには、どうも見えているようです。
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