■TPPの持つ意味
TPP交渉が大詰めのようです。
その報道の仕方に、違和感があります。
テレビ報道では、消費者が安いものを入手できるか、生産者の利益を守るか、という形で報道されるようになってきています。
これこそ、この50年、政府が続けてきた方法です。
生産者よりも消費者の方が多いのですから、その報道は、TPP応援報道なのです。
このブログでも何回か書いていますが、問題をどう設定するかでメッセージはいかようにもそう阿できるのです。
こうした方法は、広報戦略の基本ですが、TPPに関しては見事に功を奏しました。
私にはあり得ない話でしたが、いまやもうTPP参加は既定の事実になっています。
TPPは「経済問題」ですが、経済は社会や文化を規定します。
バターが安くなるというレベルの経済問題は、些末な話なのです。
目先の損得しか考えられなくなってきている「消費者」は、いつも後で大きな損を後で背負わされます。
これまで何度その繰り返しが行われたでしょうか。
しかし「消費者」とはそういう存在なのでしょう。
日本の経済者とその片棒担ぎの経営学者は、せっせと消費者を創造してきたのです。
経営が顧客の創造などというバカな言葉が、いまもなお、使われているような経営学はもう捨てなければいけません。
TPPは、つまるところ、新自由主義の発想に基づいています。
そこでの「自由」とは、アメリカ資本主義の文化に支えられた「汎市場化」を理想とする自由です。
自由という言葉には、抗えない輝きがありますが、問題はだれが一番その自由を謳歌するかです。
考えればすぐわかることですが、自由は関係性の中で生まれる価値です。
すべての人が自由に振舞えるわけはなく、そこでは自由を管理するルールや基準が不可欠です。
TPPは、消費者には目先の利益をもたらしてくれるでしょうが、生活者にはとんでもない損害をもたらすような気がしてなりません。
そして、わたしたちは、そろそろ消費者から生活者へと、立場を変えなければいけません。
各地で盛んな「消費者運動」は、もう役割を終えたはずです。
そう思ってから、もう40年近くが経ちます。
そう思わせてくれた契機になった「コンシューマリズム」も、今やその意味合いさえ変わったようです。
若いころに見ていたビジョンが、ことごとく壊されつつあるのが残念です。
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