■安保法制騒動を考える10:個人としてどうするか
このシリーズも、今回が最後です。
最後に、ではそうした状況の中で、個人としてはどうしたらいいかについて、書いておこうと思います。
その前に、これからどう展開するかを少し考えておきたいと思います。
自民党の憲法改正案には、現憲法にはない「緊急事態条項」(第9章)が新設されており、「緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同左効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる」ことになっています。
2年前に、このブログで、「自民党憲法改正草案による亡国への道」という10回シリーズを書いたことがあります。
http://homepage2.nifty.com/CWS/kenpo13.htm
その時は見過ごしていたのですが、この条項の意味が最近やっと理解できました。
これは、まさに戦争行為を可能にする条項なのです。
つまりは立憲主義を外すための条項です。
ワイマール憲法にあった「大統領緊急命令条項」を思い出します。
ドイツは、この憲法条項により、悪夢への道に進みだしたのです。
私が大学時代に憲法を学んだ小林直樹さんは、「日本国憲法が軍国主義を廃した平和憲法であるため、緊急権規定をあえておかなかった」と解釈しているそうです。
すっかり忘れていました。
憲法に緊急権を明記することは「憲法の自殺」であるという意見もあるそうですが、私はそういうことにさえ気づいていませんでした。
今回、気づいたことの一つです。
話がそれてしまいましたが、憲法改正の場合、9条からではなく、この緊急事態条項を潜り込ませることが考えられます。
この条項は、それこそ最近の「緊迫した国際情勢」という言葉とセットになれば、多くの人には違和感はもたれにくいでしょう。
しかし、この条項の恐ろしさを、できるだけ多くに人に知っておいてほしいと思います。
さて、個人としてどうするか、ですが、ある人のことを紹介させてもらいます。
その人は、福島県会津の人矢部喜好さん(1884~1921)です。
矢部さんは、プロテスタントの信徒でした。
日露戦争が始まったころ、彼は、売国奴、非国民と罵声をあびせられるなかで、仲間たちと戦争反対運動に取り組んでいました。
20歳の時に、補充兵として入隊の命を受けました。
その時の彼の行動を、阿部知二さんの「良心的兵役拒否の思想」(岩波新書 1969年出版)から引用させてもらいます。
その前夜ひとりで連隊長に面会をもとめ、自分は国民としては徴兵を忌避するものでないが、神のしもべとして敵兵を殺すことができないのであるから、軍紀のためならば、この場で死をたまわりたい、と申し出た。その結果、裁判所におくられ公判に付されて、軽禁錮2か月と判決を受けて入獄した。出獄後、連隊区司令部から呼びだしを受け、彼はもとより、家族も教団の仲間も、死刑‐銃殺をはっきりと覚悟したのであった。 しかし司令部では、敵と戦うことは主義として相容れぬとして、傷病兵を看護するのはすすんでなすべきことではないかと説かれ、ついに看護卒補充として入隊して講和にいたるまでの日を送った。
著者の阿部さんは、「日本の軍部が、この早い時期において「良心的兵役拒否」の問題を、このように典型的な形で代替業務を与えることによって処理したことは、おどろくべきである」と書いています。
長くなってしまいましたが、最後に私が何をやるかです。
簡単に言えば、矢部さんのようでありたいと思います。
残念ながら、私は徴兵されないでしょうから、その機会はないでしょう。
しかし、自らの生き方において、矢部さんを見習おうと思います。
同時に、日常的には、2つのことに取り組むことにしました。
一つは、いまもやっている湯島でのサロンをさらに広げることです。
湯島のサロンの意味は、以前、シリーズで少し書きましたが、途中で終わっているので、また近いうちに書くつもりです。
湯島のサロン活動は、私の平和活動でもあるからです。
そのサロンのメニューに、近現代史の勉強会を加えようと思います。
できるだけ多くの人、とりわけ若い人たちに、歴史を知ってほしいと思います。
先日ある人から聞いたのですが、中学校で話す機会があったので、原爆が落とされた国は世界でどのくらいあるかと質問したそうです。
三択で、「1か国」「50か国」「100か国」。
一番多かったのは「50か国」だったそうです。
これは私たち大人の責任です。
また、民主主義をきちんと考える会もスタートさせます。
もう一つ個人的にやろうと決めたことがあります。
非武装抵抗や良心的兵役拒否などの書籍を読み直すことです。
この種の本は、日本でも1960年代から70年代にかけてたくさん出版されました。
私もかなり読んで刺激を受けましたが、その後なぜかその種の本は少なくなり、私も忘れていました。
わが家の書庫にも、何冊かあるはずです。
引っ張り出して読み直す予定です。
実はこのシリーズでは、徴兵制とかデモのこと、あるいは戦争に行かない権利など、いろいろ書くつもりでしたが、書けませんでした。
いつかシリーズ2を書ければと思っています。
長い文章を読んでくださって、ありがとうございました。
反論異論大歓迎です。
機会があれば湯島にも来てください。
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コメント
連載千秋楽お疲れさまでした❗
矢部さんのお話、平成の矢部さんになろうとの意思表示、しかと承りました❗🌸🍀🌸🍁🍂🍃
佐藤さんの境地には至りませんが、何かしなくては自分も日本も歴史に埋没してしまうのではないかと、勝手に想っています❗
機会を作って、サロン等に参加するようにします❗( ^-^)ノ∠※。.:*:・'°☆
投稿: 深津孝男 | 2015/10/24 08:58