■カフェサロン「ドラッカーとナチスと市民性」
今日のカフェサロン「ドラッカーとナチスと市民性」は参加者が20人を超える状況で、しかもさまざまな立場の方、世代も20代から80代まで多彩な方々が参加してくださいました。
話題提供者は、日本NPO学会の会長でもある田中弥生さんです。
田中さん本来の専門領域の話ではなく、そこから広がってきている「三題噺」です。
田中さんはドラッカーの最後の弟子とも言われています。
非営利組織に関するドラッカーの著書も訳されていますが、ドラッカーと親しく交流されているうちに、経営学者としてのドラッカーではなく、思想家としてのドラッカーに触れたようです。
そこからナチス時代のドイツ社会に関心を持っていきます。
そのあたりは、田中さんの著書『ドラッカー 2020年の日本人への「預言」』(集英社)で詳しく紹介されています。
そして、ナチスファシズムを調べていくうちに、ご自分の専門領域である、ボランティア活動やNPOへの新しい問題意識を持ち出してきたのです。
そこに田中さんの思考の柔軟さと誠実さを感じます。
今日はそうしたご自身の気づきのプロセスも含めて、とても示唆に富む問題提起をしてくださいました。
田中さんの最後の問いかけは、次のようなものです。
ドラッカーの非営利組織論の「市民性創造」とは?
ナチスのNPOと、アメリカの自治(さまざまな非営利活動)と何が違うのか?
市民性を育むには何が必要なのか?
今回は、この論点の議論にまではいけませんでしたが、問題の共有化と考えるためのヒントはたくさんあったように思います。
ナチスドイツ時代といまの日本の類似点も少し話題になりました。
市民性創造はNPOだけではなく、会社だって同じではないかという議論もありました。
また「日本の国のかたち」や「統治の必要性(言葉には出ませんでしたが、統治から協治へ)」、さらにはソーシャル・キャピタル論も少し話題になりました。
面白い論点はたくさんありましたが、中途半端に書くのは難しいので、個々の内容は省略しますが、ドラッカーの思想のあまり知られていない側面、ナチスドイツはヒトラーという狂気が生み出したものではないこと(「国民」こそが主役だったこと)、NPOに参加することだけでは市民性は育まれないこと、ドイツの企業の発展にも強制労働や「ボランティア活動」が無縁ではないこと、などが、いろいろと示唆されたように思います。
一つひとつが、いまの日本社会を考える上で、とても重要な示唆を含んでいます。
書きだすときりがありませんが、そのうち、田中さんが本を書いてくれるでしょう。
私は、ドラッカーが「協同組合」ではなく、「企業」に、社会の主役を期待したことにずっと納得できず、そのためにドラッカーがどうしても好きにはなれません。
しかし、ドラッカーの「経済人の終わり」は感動しました。
若い素直な目で時代を見通すということは、こういうことなのだと教えられました。
ぜひ多くの人に読んでいただきたい本です。
それと、田中さんも紹介してくれましたが、最近出版された「ヴァイマル憲法とヒトラー」も読んでほしい本です。
http://homepage2.nifty.com/CWS/book2.htm#004
なお、今回に少しつなげるような形で、来年の2月頃に、フランクフルト学派の研究者である楠さんに、「家族」を切り口に少し違った視点からナチスドイツといまの日本との話をしてもらおうと思っています。
ますますハードなように思われるかもしれませんが、また今回のようにさまざまな人が参加してくださるとうれしいです。
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