■節子への挽歌3036:いるだけで何かホッとする人
節子
今日は3回目の挽歌です。
これでようやく追いつきました。
節子もよく知っている田中さんが、ケーキとプレゼントを持って湯島に来てくれました。
彼女も最近いろいろと悩ましい問題を抱えていて、大変なのでしょうが、何か相談ごとがあると言って会いに来てくれたのです。
田中さんとの付き合いも、もう25年を超えるでしょうか。
最初に会った時は、モダンバレーにも熱中していた、ちょっと小生意気で挑発的な「美少女」でしたが、いまはさまざまな公職もこなしている才媛です。
公職をこなすようになると、往々にして「向こう側の人」になることが多いのですが、田中さんの場合は、ますます「こちら側の人」になっているような気がします。
だからこそ、本人は大変なのでしょうが。
佐藤さんが好きなものですよと言って渡されたプレゼントは、サンタバージョンのスヌーピーでした。
私が好きなのは、スヌーピーではなく、ライナスなのですが、まさかライナスの毛布がよかったなとわがままを言うわけにもいきません。
私にはとても悪い習癖があって、何をもらっても素直に喜ばずに、余計なひと言を言ってしまうので、最近娘から注意されているのです。
困ったものです。
それで、ライナスの名前を言いたくなったのを、あわてて封じました。
でもこのスヌーピーはなかなかいい感じなので、オフィスにしばらく飾って置こうと思います。
ケーキは東京会館のチョコレートケーキでした。
チョコレートケーキは苦手なのですが、食べてみると実に美味しいのです。
途中でまた余計なひと言を言ってしまいました。
実はチョコレートケーキは苦手なんだけど、これはとてもおいしい。
どう受け取られたでしょうか。
いやはや、人間の習癖はなかなか直らないものです。
しかし、大人になった美少女は、「おいしいでしょう、それなのに500円なのです」とにこやかに返してくれました。
私よりもずっと大人です。
実は田中さんは、1年前にとても大切な人を亡くしました。
大切な人を亡くすと、同じ状況にある人の気持ちがわかるものです。
もしかしたら、それで今日は私を元気づけに来てくれたのかもしれません。
しかし本来は、元気づけるのは私のはずですが、どうも女性を元気づけるのは不得手なのです。
ケーキを食べながら、思い出して、ところで今日は何をしに来たんだっけ?と、これまた失礼な質問をしてしまいました。
でもまあ、その質問は雑談の中で解決されていたのかもしれません。
田中さんは、佐藤さんは誰のためにも時間をとってくれるから、と言ってくれました。
そう言われるとうれしい気がします。
私自身、そう心がけているつもりだからです。
しかし、本当は逆であって、いろんな人が相談に来てくれるほど幸せなことはないのです。
おそらくあんまり役には立っていないでしょうが、役に立たない人との雑談こそが、もしかしたらとても大切なのかもしれません。
スヌーピーも話さないので役には立たないでしょうが、いるだけで何かホッとする。
私もそんな人になれればと思います。
節子は私にとって、そういう人でしたから。
私も少しはみんなの役に立っているとしたら、節子もきっと喜んでいるでしょう。
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