■一番悪いのはCoCo壱番屋ではないのか
カレーチェーン「CoCo壱番屋」が廃棄を依頼した冷凍ビーフカツなどを産廃処理業者が横流ししたことが大きな問題になっています。
しかし、どうも「問題の捉え方」に違和感があります。
期限切れの食品の表示偽装などの問題が起こるたびに感じることですが、もう一度、書いてみました。
昨年、CoCo壱番屋の創業者の宗次徳二さんの講演をお聞きしました。
宗次さんは、道端の草を食べるほどの貧しさの中で育ったという自らの子ども時代のことを話されました。
それが実に心に響くもので、「CoCo壱番屋」に行かなければと思っていました。
食材や「食べるということ」を大切にしているお店だと思ったからです。
残念ながらまだ行っていないうちに、こんな「事件」が起きました。
そして、やはり行くのをやめることにしました。
報道では横流しした産廃処理業者が悪者として取り上げられています。
たしかに横流しや「廃棄」に関して約束を守らなかったことは悪いことでしょう。
しかし、私にはどうも割り切れません。
一番悪いのは、CoCo壱番屋ではないかと思えてならないのです。
どこが悪いのか。
そもそも横流しできるような大量の食材を無駄にしたことです。
私は、お金を無駄にすることには大して意味を感じませんが、食材を無駄にすることはどうしても許せません。
お金は単なる「手段的なもの」であって、日銀が印刷した無価値のものですが、食材は多くの人たちが自然の恩恵をもらいながら汗を流して創り上げてきた「価値あるもの」です。
お金を払って自分のものにしたから廃棄してもいいだろうということにはならないと思います。
もし私が廃棄を頼まれた産廃処理業者だとしたら、まだ食べられるたくさんの食材を前に本当に捨てられるだろうかと考えてしまいます。
何とか無駄にしない方法はないだろうか、と考えるのは、人として当然のことではないかとさえ思うのです。
もちろん、だからと言って、それを横流ししていいということではありません。
読み違ってはほしくありません。念のため。
日本では大量の食品廃棄物が出ていますが、問題にはなりますが、一向に解消されません。
なぜなのか。
CoCo壱番屋のような「悪質な会社」があるからです。
そして、それを支持する私たちがいるからです。
CoCo壱番屋の経営者は、私が考える「経営」ではなく、ただ金儲けだけが「経営」だと思っているのではないかとさえ思います。
「経営」とは、それが持っている価値を引き出し、輝かせることだと私は思っています。
その姿勢で経営コンサルタントをやっていましたが、仕事は全くありません。
その腹いせになってしまうと、この記事も説得力がなくなるので話を戻しましょう。
今回の事件で明らかになったのは、日本の食産業と日本の国民(私も含まれます)が「食材」を無駄にしているという構造あるいは文化だろうと思います。
企業の場合、それが経営を圧迫し、働く人の処遇を劣化させてもいるのです。
その構造を解消する方法は、すでに見つかっています。
たとえばトヨタによって広げられたカンバン方式、ジャストインタイムシステムです。
お客様の注文に合わせて、食材を仕入れ、過剰な食材在庫を持たない、過剰な供給はしないという発想です。
食関連でも、そうした発想で動き出しているところはあります。
それが広がれば、膨大な量の食材や食品の廃棄処分はなくなるでしょう。
しかし、残念ながら時代はそれとは正反対の方を向いています。
その象徴の一つがTPPだと思いますが、話を広げるのは止めましょう。
CoCo壱番屋の経営者は、創業者の宗次さんの思想を思い出してほしいものです。
食材を廃棄するなどという発想は道端の草を食べてきたという宗次さんの話が本当なら、絶対に起きないでしょう。
フードバンクや炊き出し、子ども食堂が広がっている時代です。
せめて必要な人に無償で提供するくらいのことは考えられるはずです。
流すとしても、業者仲間に流すのではなく、NPOや社会に流すべきでした。
その視点さえなかったということは、社会性を失っていたとしか言えません。
私が一番違和感を持つのは、そうした問題に視野を向けない報道関係者の「社会性」のなさなのです。
あるいは、そうしたことに気づかない、消費者団体や消費者そのものです。
まあ私にできることは、CoCo壱番には行かないということくらいですが、そうした小さな積み重ねが世界を変えていくと思っています。
今回は私の思いが伝わってでしょうか。
CoCo壱番を非難していますが、それが目的ではありませんし、実は必ずしもCoCo壱番を非難しているのでもありません。
実際には言及していない「食生活管理制度」や「食のあり方」、あるいは食とは関係ない「問題の立て方」、さらには「私たちの生き方への問いかけ」が私の伝えたいことなのです。
うまく伝わるといいのですが。
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