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2016/04/10

■節子への挽歌3143:「時は流れない それは積み重なる」

時は流れない。それは積み重なる。

これは1991年にオンエアされた、サントリーのウイスキー「クレスト12年」のテレビCMのコピーです。
秋山晶さんの作品で、CMの出演者はショーン・コネリーでした。
ウイスキーの熟成を、アクションスターだったショーン・コネリーが演技派へと成熟していったことに重ねているわけです。
さらに、この言葉は、さまざまな事柄が積み重なって「歴史」が作られていることも示唆しています。

一般に、時間は「蓄積」というよりも「流れ」で捉えられがちです。
美空ひばりの名曲「川の流れのように」、私たちは人生における時間を捉えがちです。
であればこそ、愛する人を亡くした人に対して、「時間が悲しみを癒してくれるでしょう」とつい言ってしまうのです。
しかし、実際に愛する人を失った人は、時は決して流れ去るものではなく、積み重なっていくものであることに気づくでしょう。
時は、悲しみを癒してなどくれないのです。

時間の流れに身を任せたとしても、人生は、川の流れに身を任せながら、周囲の風景を眺めていくのとは違うのです。
過ぎ去った出来事は、決して流れ去ることはなく、いつも常に、自分のすぐ下に存在し、今現在の自分を支えているのです。
忘れることなどできないばかりか、それなくしては、いまここにさえ、安定して立ってさえいられないのです。
時間は、水平に流れ去るのではなく、人が立つ基盤を形作って、垂直に積み重なっているわけです。

節子がいなくなってから、8年半。
時間とは流れるものではなく、積み重なってくるものだと、つくづく実感します。

今日、久しぶりに、美空ひばりの「川の流れのように」を偶然聴いて、改めて時間の残酷さを思いました。
そして、もしかしたら、積み重なった時間は、足元にではなく、頭上にあるのではないのかと、ふと思いました。

10年前の今日は、節子も一緒に、滋賀の湖東三山をお参りしていました。
あの時はまだ奇跡が起こると確信していました。
あの時、もしかしたら、私自身、時は流れるのだと考えていたのかもしれません。
人は、おろかな存在なのです。
経験してから知ることの、なんと多いことでしょうか。

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