■ストーリーテリングによるまちづくり
私が住んでいる千葉県の我孫子市は「物語の生まれるまち」を標榜しています。
物語の生まれるまち。
これは、我孫子市だけではなく、最近の流行語でもありますが、
本来、「まちづくり」とは「物語を育てること」だろうと思います。
そして、その場合の主人公は、住民一人ひとりなのだろうと思います。
残念ながら、行政にはそういう発想はありません。
ですから、単なるスローガンに終わることが少なくありません。
私は20年近く前に茨城県の美野里町(現在の小美玉市)の文化センターの建設にささやかながら関わらせてもらったことがあります。
当時は、ハコモノ行政批判が広がっていた時期で、美野里町も文化センター建設に反対する人が少なくありませんでした。
私は、そのプロジェクトのアドバイザー役で関わらせてもらったのですが、住民のみなさんに「文化センターではなく、文化の物語をつくる」プロジェクトにしましょうと話させてもらいました。
つまり「モノづくり」ではなく、みんなで「物語りましょう」と呼びかけたのです。
そして「物語の生まれる」拠点の一つとしての文化センターを提案させてもらったのです。
そこからたくさんの物語を経て、文化センター「みの~れ」が完成しました。
建物だけではなく、たくさんの物語も生まれました。
その経過が、あまりに面白かったので、住民の人たちと一緒に、その「文化がみの~れ物語」(茨城新聞社出版)という本にしました。
文化センター「みの~れ」は、いまなお、生き生きした物語を生み出しています。
センターが完成してから10年たった時に、住民たちが、文化センターを拠点に生まれた物語を本にしたいと、またやってきました。
前回と同様、住民たちで編集委員会を立ち上げ、文化センターを拠点に生き方を変えていった住民たちに、自らの物語を語ってもらい、「まちづくり編集会議」(日本地域社会研究所出版)という本を出版しました。
20人を超える人たちが、みずからの物語を生き生きと語っているのを読むと、物語りあうことがまちを育てていくことなのだということが実感できます。
「まち」とは、そこに住む人たちにとっての舞台です。
誰かがつくった物語に合わせるのではなく、住民一人ひとりが主役になって、自らの物語を語りだすことが大事です。
人は誰でも、物語る力がある。
それに気づけば、自然と物語は育っていきます。
私たちが先月立ち上げたストーリーテリング協会は、そうした「物語り合うまちづくり」を広げていきたいと考えています。
住民主役のまちづくりに取り組みたいという人がいたら、ぜひご相談ください。
一緒に、「物語の生まれるまち」を育てていければと思っています。
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