■カフェサロン「病原体から見た人間」の報告
遅くなりましたが、昨日開催のちょっと知的なカフェサロン「病原体から見た人間」の報告です。
12人の参加でした。
益田さんは、ジフテリア菌の話から始めました。
ジフテリア菌が人に悪さをするのは、ジフテリア菌に寄生しているファージ(細菌に感染するウイルスのこと)が持っている「毒素」のせいなのだそうです。
そこから、host parasite relation、つまり寄生者と宿主の構造の話になりました。
ファージの毒素は、宿主であるジフテリア菌には悪さはせずに、ジフテリア菌の宿主である人間に悪さをするのです。
そこから、寄生者にとっての環境とは何かという問題が出てきます。
生物学的に言えば、言うまでもなく、寄生者にとっての環境は宿主です。
ですから、生物と環境は、一次的な意味では win-winの関係です。
ジフテリア菌の場合も、よく見れば、host parasite relation はwin-win関係なのです。
しかし、ジフテリア菌の宿主である人を、ファージの毒素が殺害するとなると、ジフテリア菌は自らを支える環境を失うことになるわけです。
ファージの想像力が弱く、見えている世界がいかにも狭いのです。
ジフテリア菌の場合、みずからが環境となってさせているファージがあるとともに、ジフテリア菌にとっての環境である人間がいます。
この環境構造を人間に置き換えるとどうなるか。
人間を支える環境は自然環境といっていいでしょう。
人は自然環境に寄生しているわけです。
ではジフテリア菌にとってのファージは、人間の場合、何でしょうか。
益田さんは、それを「心」あるいは「脳」といいます。
さらに、「心」を中心に考えたらどうなるか。
心を支えている環境は「肉体」、心の中にあるファージ役は「欲」だというのです。
たとえば、糖尿病患者が、「食欲会っての自分」から「肉体会っての自分」へと認識を変えれば、事態は変わりだすと益田さんは言います。
これはきわめてわかりやすい話です。
つまり、自分をどうアイデンティファイするか、そして環境をどう捉えるか、という問題です。
ところで、細菌には、常在菌と病原菌があるそうです。
というか、広い意味での世界と仲良くやっている常在性の細菌と間接的な環境に悪さをする病原性の細菌がいるそうです。
これも人間社会に喩えれば、いろいろなことに気づかされますが、大切なのは、「病原性」という言葉です。
「毒素」という言葉もそうですが、いずれも人間の都合での命名です。
そこから考えていくと、さらに深い世界が見えてくる気がします。
人はなぜ自殺するか、人はなぜ戦争するか。
そういう話も出ましたが、時間の関係もあってあまり深められませんでしたが、いろいろと考えるヒントはあったと思います。
私は、政治(民主主義)や経済(資本主義)を考える大きなヒントもあるような気がしました。
ちょっと飛躍しますが、私はアリストテレスの「ピュシス」(「自然」と訳されています)という概念に共感しているのですが、その視点からは病原体も人間も同じ存在だろうと思います。
だから、人にとっての「悪さ」には、かならず「善さ」もふくまれていて、それをどう編集するかが課題なのだろうと思います。
蛇足ですが、今回はなぜか女性の参加者は一人もいませんでした。
男性にとっての環境は女性という捉え方をすると、これもまた面白い発見があるかもしれません。
なお今回の話を、参加者のお一人の西坂さんが録音してくれています。
益田さんはホワイトボードを使って説明してくれていたので、音声だけではわかりにくいと思いますが、ご希望の方はご連絡ください。
また今回は、初めての湯島サロン参加者もおふたりいました。
おふたりともとても喜んでくださいました。
湯島サロンは、いつでも気楽で息抜きできますので、初めての方も喜んでくださいます。
ぜひみなさんも気楽にご参加ください。
なお、今回2回目だった「人間を考えるシリーズ」の3回目は、スピリチュアルな話にできないかと考えています。
ちょっと飛びすぎてしまうかもしれませんが、焦点をどこに置こうか、ちょっと悩んでいます。
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