■豊洲を選んだ時に築地は終わったのかもしれません
豊洲盛り土問題はますます問題が深刻化しています。
築地市場の全面的改築が話題になったのは、鈴木都政の時代でした。
バブル期らしい、ウォーターフロント計画もにぎやかに報道されていました。
当時私は、東京都のCIプロジェクトの委員をさせてもらっていた関係で、ウォーターフロント計画も少しだけ勉強しました。
当時、仲卸の人とも知り合ったこともあり、築地への関心も持っていました。
しかし、都知事が青島さんになった途端に、ウォーターフロント計画も築地改築も消えていきました。
その後、私が朝の築地市場を見せてもらった時には、しかしまだ、移転よりも改築のほうが話題だったような気がします。
豊洲移転が決まったのは、石原さんの知事時代でしたが、なぜ築地の市場関係者がそれを受け容れたのか、理解できませんでした。
普通に考えれば、よりによって、安全性に問題があるところへの移転を受け入れたということは、よほどのお金が動いたのだろうなとしか思えませんでした。
築地は終わったと思いました。
文化ではなく、経済になってしまったのです。
興味はなくなりました。
2年ほど前に、築地の老舗の一つの丸山海苔店の社長に会う機会がありました。
そして1冊の本をもらいました。
テオドル・ベスターの「築地」です。
600頁を超す大著です。
それを読んで、不思議に思いました。
この築地はどこに行ってしまったのか。
築地市場の人たちは、どうして豊洲などを受け容れたのか。
豊洲を受け容れた以上は、もはや築地の哲学は消え去っているでしょう。
築地は過去のものになってしまったのです。
それは、今回の問題への築地市場関係者の発言が明確に語っています。
彼らは、もはや「食の専門家」ではなく、「産業人」になっています。
そして、いま起こっているのはまさに、経済問題です。
そこには、食という視点はなく、築地の人たちの誇りは感じられません。
いま問題になっているようなことは、私は初めて知りましたが、築地市場のトップの人たちであれば、知っていたはずですし、少なくとも知りうる立場にあったはずです。
現場を見に行けば、すぐわかることです。
設計図を見てもわかるはずです。
まさか自分たちにとって一番大切であるはずの、豊洲の建物の設計図を見ていないとは思えません。
市場関係者は、今頃知らないとは言えない立場のはずです。
そう思えてなりません。
豊洲移転をやめるかどうか、それが日本の未来を決めるような気がします。
経済の視点からではなく、生命の視点から、考えれば、おのずとそうなるはずでしょうが、福島原発事故の後の政府や国民の言動を思いだすと、結局は豊洲に移転することもありえそうです。
築地市場の若い世代から、豊洲拒否の動きは出ないものなのでしょうか。
ちなみに、テオドル・ベスターの「築地」は、厚くて読むのは大変ですが、示唆に富む面白い本です。
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