■なぜ日本人は「出生地」にこだわるのか
昨年、朝日新聞のコラムで、酒井啓子さんが刺激的な問いを出しています。
「日本の政治がひどくなって自由に議論できない社会になったら、海外に脱出するか」。
世界的にみれば、よくある問いの一つでしょうが、その問いへの同僚などの反応に酒井さんは違和感を持ったようです。
そのことに、私も大きな関心を持ちます。
日本から脱出することは、多くの日本人には選択肢にさえならないかもしれません。
日本人は、もしかしたら根っからの「国民」なのかもしれません。
そういえば、難民問題も、日本では「受け入れ問題」でしかありません。
そして受入に対して世代を問わずこぞって否定的なのは、福島原発の被災地から転居した子どもたちの扱いを見ればよくわかります。
出生地から出ることにも入ることにも、みんな抵抗があるのです。
日本はどうやら極めて、閉じられた社会のようです。
よく言われるように、「内」と「外」とは、別世界なのです。
福島原発事故につなげていえば、酒井さんの疑問はこういうようにも置き換えられます。
「住んでいるところの環境がひどくなったら、他のところに脱出するか」。
この問いに対しても、必ずしも答えは自明ではないでしょう。
実際に被災者のみなさんは、やはり住んでいたところに戻りたいという意向が強いように感じます。
もしかしたら、報道している人たちに、そうした発想が強くあるために、そういう姿勢で報道されているのかもしれませんが、なぜかみんな戻りたがる。
被災地に戻らずに加害者に転居を保障させるような動きは強まりませんし、政府も何とか除染して元に戻させようとしています。
これは組織への帰属性にもつながっているかもしれません。
かなり粗っぽい議論になりますが、こうした私たちの心性が、日本の社会を形成してきているように思います。
私たちにとって、環境は所与のものか、選択できるものか。
私には、その答えは明確ですが、みなさんはいかがでしょうか。
そのいずれかによって、生き方は大きく変わっているはずです。
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