■巻町原発誘致住民投票をテーマにしたサロンの報告
2月19日のリンカーンクラブサロン「原発を葬った市民のスクラム 巻町住民投票をめぐって」は10人のサロンになりました。
今回は、あらかじめ折原さんの報告書を読んでもらっての参加でしたので、ちょっとバリアが高かったかもしれません。
その反面、関心の高い人が多かったので、それぞれいろんな示唆を受けたのではないかと思います。
折原さんは、巻町原発誘致住民投票の顚末を3ページの表にまとめたレジメで説明してくれました。
とてもわかりやすい表です。
改めてこの顚末を俯瞰するといろんなことが感じられます。
そもそも巻町で住民投票が行われるきっかけは、1994年の町長選挙で、原発推進派の人が当選したことでした。
選挙には、推進派、慎重派、反対派の3人が立候補したのですが、慎重派と反対派の投票数を合計すると、推進派への投票数よりも多かったのです。
そこで、町民はむしろ原発には反対なのではないかという思いを持った、巻町に長年住んでいる有志たちが、「住民投票で巻原発をとめる連絡会」を立ち上げ、自主管理の住民投票に取り組んだのです。
そうした取り組みの過程は、折原さんの論文に詳しいですが、住民が主役になれば、いろんなことができることがわかります。
しかしなぜ巻町ではこうしたことが成功したのか。
そこが昨日の話し合いの論点の一つでした。
私は、その最大の理由は、巻町にはまだしっかりしたコミュニティ、人の繋がりと自然とのつながりがあったことだと思っています。
そのことは、折原さんの報告からも読み取れる気がします。
他にもさまざまな要因が考えられます。
折原さんの報告には、住民たちが「事実」を知るにつれて変わっていったことが書かれています。
それも大きな理由だったと思います。
事実を知ることで、人の意識と行動は変わってきます。
それが、私が湯島のサロンを続けている理由の一つです。
原発という大きな問題だったから、住民投票にまで行ったのかという問いかけもありました。
巻町では、その後も、新潟市への合併を巡って住民投票が行われたそうです。
近隣に葬儀場やごみ処理場ができることで住民が動き出すことは、むしろ多いですから、原発という大きな問題だったことよりも、原発誘致と自分たちの生活の繋がりを見えるようにしていったことが、住民運動を実現した理由のような気がします。
集団的自衛権のような問題は、なかなか私たちの生活とのつながりが見えてきませんから、当事者意識を持ちにくいという意見も出されました。
巻町の住民投票は、原発問題として取り上げられることが多いのですが、私はむしろそうではなくて、住民が当事者意識を持って動けば、大きな流れでさえ変えられるということを示した事例として捉えています。
「与えられたまちづくり」から「創りだすまちづくり」へと変えていけるのです。
これに関しては、3月19日に「まちづくり」の公開フォーラムを予定していますので、関心のある方はぜひご参加ください。
継続してフォーラムを開催していく予定です。
http://cws.c.ooco.jp/info1.htm#170319
巻町の住民投票活動は、たぶん巻町の住民たちに大きな変化を起こしたと思います。
私の関心はそこにあります。
当時、巻高校の高校生は、生徒会で原発誘致に関しての投票までやったそうです。
それを体験した高校生は、いまどうしているか。
そこに大きな関心があります。
まちづくりも、国政も、どんどん住民や国民の手を離れだしているような気がしますが、それは自治体や政府が悪いからだけではないはずです。
その気になれば、そして動き出せば、流れは変えられる。
その貴重な体験をした巻町の教訓から、私たちはたくさんのことを学べるはずです。
いつか、巻町の元高校生を呼んで、公開フォーラムができないかと思っています。
あるいは折原さんに頼んで、一度、巻町訪問ツアーを企画できないかと思っています。
そしてそうしたことの中から、実践的な活動が始められないかと思っています。
いつものように、偏った報告になりましたが、西坂さんが記録してくれていますので、もしかしたら報告の記録はお伝えできるかもしれません。
折原さんの誠実な報告に感謝します。
なお、折原さんは「脱原発社会への展望」と題した4部作を同人誌に載せています。
もし読まれたい方がいたら、ご連絡ください。
折原さんと相談したうえで、PDF版をお届けします。
できれば、折原さんはそれを出版したいと考えていますので、どこか出版の相談に乗ってくれそうなところがあればご紹介ください。
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