■世界の対立軸が変わってきた気がします〔2〕
このシリーズを続けて書こうと思っていましたが、間があいてしまいました。
最初に書こうと思った時の思いが少し薄れているのですが、再開しようと思います。
モハメド・アリの話から再開したいと思います。
先日、NHKテレビの「映像の時代」を見て、世界の対立軸の変化の象徴的な事件が示唆されていたからです。
よく知られているように、モハメド・アリは、ボクサーとしての絶頂期だった24才の時(1967年)にベトナム戦争のための徴兵命令を拒否します。
国家に対する命令拒否で、モハメド・アリは裁判で有罪となり、チャンピオンベルトもボクシングライセンスも剥奪されてしまいます。
当時、彼はこう語っています。
「戦争はひたすら何の罪もない人を殺して殺して殺し続けるだけだ」
「おれはベトコン(北ベトナム)にうらみはねえ」と言ったという話もあります。
アリの徴兵拒否をどう思うかと質問されたキング牧師は、こう答えています。
私も徴兵制度に反対だ。 アリが言うように、われわれは弾圧してくる体制の被害者なのだ。
そこから、アメリカでは徴兵礼状を焼き捨てる動きが広まっていきます。
時代はまさに、1960年代の対抗文化が広がりだした「緑色革命」の時代です。
チャールズ・ライクの書いた「緑色革命」に影響された若者は世界中にたくさんいたでしょう。
その本で、ライクは、世界の構造が変化しつつあることを語っています。
キング牧師が言っているように、人間と体制(システム)の対立が、世界の基軸になってきていたのです。
ベトナム戦争も、アメリカという国とベトナムという国が戦っていたのではなく、国家システムと人間が戦っていたのです。
アメリカという国家は、ベトナム戦争から多くのことを学んだはずでした。
当時、日本では宇井純さんが、そういう枠組みで活動を始めていました。
科学技術の世界では、高木仁三郎さんが、やはり科学技術というシステムに異議申立てしていました。
ヨーロッパでも若者たちが大きなパワーを発揮していました。
しかし、残念ながら、ほとんどすべての新しい波は、システムの攻勢の前に鎮められてきたような気がします。
システムはますます巨大化し、人間を弾圧しだします。
そして、9.11が仕組まれ、21世紀は再び「システムの時代」となっていきます。
アレントが懸念していた全体主義的風潮が、また世界を覆い出したのです。
1960年代の、あの若者たちの人間的なつながりはバラバラにされ、金銭つながりの人間たちがシステムの走狗として世界を牛耳だしました。
経済的な格差が政治的な格差を生み出し、システムから追い出されだした低所得者たちが声を上げだしました。
アメリカで、ヨーロッパで、アジアで。
しかし、低所得者は、高所得者と、結局は同じ種族です。
お金にこだわっている限り、新しい生き方はできないのですから、勝負は最初から決まっています。
しかし、そうでない、まさに新しい対立軸を示唆する動きもあります。
その動きがいま、沖縄で起こっている。
そんな気がします。
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