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2017/09/10

■カフェサロン「オランダの社会と教育」報告

湯島サロンへの初参加の方5人を含めて、多様な立場の人たちの14人の集まりになりました。
教育関係者も多かったですが、教育への関心の高さを改めて感じました。

折原さんは、10ページにわたるレジメをつくってきてくれました。
オランダの教育の実態を多くの人に伝えたいという折原さんの思いが伝わってきます。

折原さんがオランダの教育に着目した理由は、オランダの子どもたちが世界一幸せだということからだそうです。
2007年のユニセフの「子どもの幸福度調査」ではオランダは総合1位。
たとえば、子どもが「自分は孤独である」という項目でいえば、オランダは2.9%で最も低かったそうです。
ちなみに日本は29.8%で最も高かったそうです。
また、オランダでは90%の子どもたちが「学校が楽しい」と応えています。
だからと言って、いわゆる「学力」が低いわけではなく、「学力」も世界トップクラスなのです。
ちなみに、2016年の「生活満足度の格差」調査でも、世界の主要国の中で最も格差が少ないのがオランダでした。

オランダも1980年ころまでは「オランダ病」と言われていたように、経済も生活も問題を抱えていました。
子どもたちもハッピーではなく、出生率も1.5を割っていました。
日本と同じような状況だったわけですが、なぜ日本とは違った展開になったのか。
転機になったのは、政府と企業家と労働組合が一緒になって取り決めた「ワッセナーの合意」と言われるものです。
そこから「同一労働同一条件(同一賃金ではありません)」を基本にしたワークシェアリングが生まれ、人々の働き方や生き方が変わりだしたのです。

オランダの教育現場が変わったのは、そうした社会全体のあり方や人々の生き方の変化の上にあるのです。
その視点がないと、たぶんいくらオランダ詣でをしても役には立たないと思います。
折原さんはそうしたオランダの状況をていねいに説明した後、ご自分も参加された2013年のオランダの教育現場視察のDVDを見せてくれました。
映像から伝わってくるオランダの教育現場は、書物などで読む以上に現実感があります。
映像が終わった後、感動したというためいきが参加者から出るほど、日本の学校現場とは違うものでした。
私も学校の職員室が生徒たちも自由に集まれるカフェのような雰囲気なのに感動しました。
そこにオランダの学校の本質のすべてが見えるような気がしました。

紹介したいことは山のようにありますが、それは折原さんの本や論文、あるいは折原さんが紹介してくれた記録ビデオ『教育先進国リポート オランダ入門編』(監修リヒテルズ・直子)を見てください。
ちなみにビデオにはチラッと折原さんの姿も出てきます。

少しだけ私の印象に残ったことを書きます。
オランダの義務教育は5歳からだそうですが、4歳になると翌月から小学校に入学でき、
1年生のクラスに入って、5歳児と一緒に教育を受けられるのだそうです。
つまり毎月入学者がいるということです。
ここにオランダの人たちの基本的な価値観を感じます。

授業は一斉に教えるようなスタイルではなく、生徒一人ひとりに合わせて、寄り添いながら成長を支援し見守っていきます。
子どもたちの学びに接しながら、活動に偏りがないよう、必要最小限度のアドバイスをするのが、先生の役割だそうです。
個人別のプロファイルがしっかりと作られ、数字で評価するのではなく、その子の成長に役立つことが先生によってしっかりと残されていきます。
学びの場も窮屈な教室だけではなく、廊下さえもが学びとして使われます。
授業のスタイルは、日本のような一斉授業ではなく、数人のグループを基本に行なう個別教育です。
したがって、日本のような検定教科書はなく、学校が独自に選んだ教材を、一人ひとりの子どもの発達段階や適性、そして、特別のニーズに合わせて選びながら子どもに提供するそうです。
書きだしたらきりがないので、このくらいにしましょう。

話し合いでは、日本の教育現場との違いやなぜそういう教育がうまくいくのか、どんな人が先生になるのか、など、いろんな話が出されました。
これも紹介するときりがないので、私の意見だけを書いておきます。
私は、オランダの教育がうまくいったのは学校だけの話ではなく、その根底には社会や経済の変化とみんなの生き方の変化があったからだと思います。

よく言われるように、ワッセナー合意によって、オランダでは働き方への基本的な考え方が変わりました。
その結果、それぞれが自らの生き方に合わせて働き方を選べるようになった。
つまり「しなやかに働き、しなやかに生きる」ことができる社会になったのです。
自分の納得できる生き方ができることで、みんなが幸せになり、笑顔が増えてきた。
親やまわりの大人たちの笑顔が増えれば、子どもたちは精神的にも安定してきます。
しかも自らに会った学び方を支えてくれる仕組みがある。
そうなれば、子どもたちものびのびと学ぶことができ、当然、学校は楽しい場になり、学力も向上する。
私は、オランダの教育の成功は、制度の問題だけではなく、そうした大人たちの生き方に大きく起因していると思います。
働き方を自分で選ぶのと同じように、自分の子どもたちが通う学校もまた、自分たちで選ぶという文化が育っているのです。

「世界一子どもが幸せな国」の理由を知りたくてオランダに出向いて得た答は、「大人が、親が幸せだから、子どもも幸せ」だということだった、と「ワンモアベイビー応援団」の人たちは、その報告をまとめた「18時に帰る」という本に書いています。

親や先生が余裕なく働いている社会では、どんなに制度を変えても問題は解決しない。
私はそう思います。
一番の問題は、私たちの生き方なのではないかと思います。
ちなみにこれは、学校教育だけの話ではありません。
私は、さまざまな分野で活動している人たちとささやかな付き合いがありますが、私がいつも気になっているのは、このことです。

書いていたらきりがありませんね。
前回のサロンは、食を切り口に同じようなところに行きつきましたが、今回は学校教育から私たちの生き方に行きついた気がします。
学校が荒れているのではありません。
私たちの生き方が荒れているのです。
私も生き方を改めて問い直そうと思います。
そう気づかせてくれた折原さんと参加者のみなさんに感謝します。

なお、最後に折原さんは、リヒテル直子さんの「民主的シチズンシップ教育」についてのビデオも見せてくれました。
これはこれだけで大きなテーマになります。
これについては改めて別の形でサロンをやることを考えていますので、また案内させてもらいます。

Orihara


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