■カフェサロン「医療・社会保障崩壊のルーツは明治維新」報告
長年、医師の立場から、日本の医療制度の問題点を指摘しつづけているNPO法人医療制度研究会の本田さんのサロンは、台風直前の雨にもかかわらず、15人のサロンになりました。
本田さんは外科医でしたが、還暦を機に外科医を引退し、世直し活動に取り組みだしています。
医療制度改革に取り組む過程で、明治維新にまでさかのぼって調べ出したら、日本の医療制度を変えていくには、日本の国家のあり方まで考えないといけないことに気づいてしまったのです。
そこで今回のテーマは、「医療・社会保障崩壊のルーツは明治維新」となったわけです。
テーマは大きいですが、話は本田さんのとても身近な話から始まりました。
そして、密度の濃い内容の話を、聞き手を飽きさせることなく、常に笑いを起こしながら、1時間半、ぴっちりと話してくれました。
その内容を要約すると、明治維新は薩長の下級武士が大英帝国の阿片マネーを背景に、皇室を錦の御旗に政治利用して徳川から政権を奪取したクーデターだった。そして彼らによるクレプトクラシー(収奪・盗賊政治)は敗戦後70年以上経過した現在も続いている。そしてそれこそが医療や社会保障の崩壊の根因である。
とまあこれが大筋ですが、医師不足や病院経営の実態についても数字でしっかりと論証してくれました。
しかし、メディアが伝える医療の話は、医療事故や医療費増加への危機感をあおるような話ばかりです。
世界的に見て国民人口あたりの医師がいかに少ないか、そして、医師の過労死や自殺の問題、医療面での国家負担の低さ、などはなかなか報道されません。
本田さんの話の内容をきちんとお伝えするのは難しいですが、サロンで使ったパワーポイントを本田さんが提供してくださったので、興味のある人はぜひじっくりとそれを見てください。https://www.dropbox.com/s/41kjan3lrrc2349/2017.10.29%E6%9C%AC%E7%94%B0%E5%AE%8F.pptx?dl=0
併せて、本田さんが今年初めに雑誌に寄稿した論考も読んでみてください。
これもとても興味深いです。
https://www.dropbox.com/s/okqbp3k4q7x0isn/%E6%9C%88%E5%88%8A%E4%BF%9D%E9%99%BA%E8%A8%BA%E7%99%82%E6%98%8E%E6%B2%BB%E7%B6%AD%E6%96%B0.PDF?dl=0
私が本田さんと出会ったのは15年ほど前ですが、その時に、日本の医師が(意図的に)ますます不足する方向にあることを知って驚きました。
その後、本田さんは盛んにテレビに出られていましたが、最近は見かけることがなくなりました。
それが気になっていましたが、その理由も今回よくわかりました。
現場からの情報発信は政策決定者には疎まれるようです。
日本人はマスコミを信じすぎるという話の中で、参加者から学校で「教科書」依存を植え付けられた日本人にとってマスメディアは大人の「教科書」だという「教科書幻想」の話も出ましたが、マスコミまで「国家検定」が行なわる方向にあるのかもしれません。
ちなみに、日本の医師不足はいまなお世界水準に比較して絶対的に少なく、医師が地域的に偏在しているという問題ではないことを本田さんはデータで示してくれました。
本田さんが活動に大きくコミットしていった契機は、日本から病院が消えるのではないかといち早く警告を発していた長崎大学名誉教授の高岡善人さんからの1通のファックスだったそうです。
高岡さんとの出会いから本田さんは渋沢栄一を学びだし、明治維新にまでたどりついたのですが、高岡さんの遺志を引き継ぎながら、その思いを広げるために活動しているのです。
そのあたりのお話もパワーポイントに書かれています。
本田さんは、ドイツの医師、ルードルフ・フィルヒョウの「医療はすべて政治」という言葉も紹介してくれました。
この言葉にとても共感しますが、私は「福祉はすべて政治」だと思っています。
にもかかわらず日本の福祉に取り組むNPOが政治に概して無関心で、受け身的なことをいつも残念に思っています。
政治に関心を持たずに市民活動などできるはずはありません。
ちなみに、最近の日本では、自助・自立・相互扶助の動きを強め、公的な社会保障や医療が後退し、市場化される傾向にありますが、こうした動きの意味を、私たちはもっとしっかりと考えなければいけません。
本田さんは、最後にネルソン・マンデラの言葉を紹介してくれました。
何もせず、何も言わず、不正に立ち向かわず、抑圧を抗議せず、それで自分たちにとっての良い社会、良い暮らしを求めることは不可能です
心に響きます。
これこそが私が考える政治意識であり、社会性です。
本田さんは、「気づいた者」の責任として活動を続けていますが、「気づかない者」の責任も罪深い。
であれば、いろんなことに気づく場としてのサロンをさらに広げていくことが大切だと改めて思いました。
医療シリーズは引き続き継続します。
医療関係者にもぜひ参加してほしいです。
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