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2017/10/15

■カフェサロン「今を生きる先住民族」報告

アイヌ民族との交流を重ねている写真家の井口康弘さんにお願いしたサロンには、アイヌ民族の島田あけみさん(チャシ アン カラの会代表)も参加していただき、13人のサロンになりました。

井口さんは、2013年に行われた、ニュージーランドのマオリ民族とアイヌ民族との草の根交流活動の映像をまず紹介してくれました。
ニュージーランドでは1970年代からマオリ民族の文化復興と権利回復が進んでいます。
そして、マオリの文化がニュージーランド社会や経済に大きな貢献をしているそうです。
その一方で、日本でアイヌ民族が先住民族として認められたのは2008年。
アイヌがアイヌとして生きる社会にはまだなっていないようです。
それを知った、マオリの人たちがこの交流活動を呼びかけてくれたのです。
それ以前から、島田さんはマオリと交流がありました。

2013年、マオリの呼びかけで、若者を中心に15人のアイヌが1か月にわたりニュージーランドを訪れ、マオリの歴史・文化・教育制度などを学びました。
そのときに、マオリの人たちから、「40年前にはマオリは一つになれなかったが、いまは団結して立ち上がれるようになった。きっとアイヌもそうなれる。私たちが持っている経験・知識はすべて皆さんと分かち合いたい」と言われたそうです。
その時の映像を井口さんは見せてくれたのです。

映像からは、マオリの人たちの生き生きした表情と豊かさ、そして誇りが伝わってきます。
参加したアイヌの若者たちが、大きなエネルギーをもらったことがよくわかります。
マオリとの出会いが、変化の芽を育てはじめ、帰国後、研修参加者によって、マオリの取り組みをモデルにした新しいプロジェクトが立ち上がりました。

島田さんは、45歳からアイヌになったと言います。
アイヌとして誇りを持って生きはじめたということでしょうが、そのきっかけの一つが、マオリとの交流のようです。
井口さんの映像のおかげで、そうした島田さんの言葉が素直に理解できました。

Ainusalon

後半の話し合いではいろんな話が出ましたが、きちんとした話し合いをするには、私はあまりにアイヌを知らないことに気づきました。
学生の頃からアイヌには関心があり、それなりにアイヌ関係の本は読んでいますし、知里幸恵さんがまとめたユーカラから選んだというアイヌ神謡集も読んではいるのですが、それらはまったくの知識でしかありません。
訊きたいことは山のようにあるのですが、どう訊いていいかさえわからないことに気づかされました。
それに私の中で浮かんできた質問などは、もしかしたら瑣末な話かもしれないという気がしてしまいました。
マオリとアイヌの交流の映像が、あまりに大きなメッセージを与えてくれたからかもしれません。
そこに出てきたマオリやアイヌの人たちの表情は、あまりに明るく、豊かでした。

いずれにしろ、私たちが知っているアイヌ像は、かなり現実とは違うようです。
たぶん多くの人は、アイヌの人たちの写真を見たことがあるでしょう。
それはもしかしたら、創られた映像だったかもしれません。
それに関しては、西坂さんが具体的な材料を示しながら話してくれました。

島田さんに言わせれば、アイヌに対する差別意識はまだ残っているようです。
日頃アイヌとの接点のない私は、具体的に差別をイメージすることさえできません。
しかし、まだ生きづらさはなくなっていないようです。
そうした状況を変えていくためには、子どもたち若い世代に、アイヌの誇りを取り戻すことが大切だと島田さんは言います。
マオリの人たちとの交流がそれを育ててくれると島田さんは考えています。
アイヌを生きることの楽しさや喜びを体験することが大切だと言うのです。
とても共感できます。
ですから、マオリから勇気と希望を受け継ぐために、第2回交流プログラムを開催したいと、今その準備に取り組んでいます。
資金的な支援を現在クラウドファンディングで呼びかけています。
ぜひみなさんも協力してくれませんか。
https://readyfor.jp/projects/ainu-maori
アイヌ文化の復興を目指していくことが、日本がもっと多様で、調和のある、平等な社会になることにつながっていくと島田さんたちは考えているのです。
問題はアイヌだけではなく、私にもつながっている「みんなのプロジェクト」なのです。

小田原からわざわざ参加してくれた露木さんは、最近の中国の少数民族同化政策につなげて、話をしてくれました。
日本も同じようなことをやっていたら、中国に対抗できないのではないかと言うことです。
世界各地で少数民族の問題が広がっていますが、日本の国内にも同じ問題があることに私たちは気づかなければいけません。

同時に、これはまた、少数民族問題だけではなく、障害者やハンセン病、さらには福島の被災者などにもつながる話です。
つまり、私たちの社会のあり方に関わっているのです。
今回のサロンで、アイヌ問題から見えてくることの大きさと深さを改めて感じました。
今回も自分の無知さを改めて思い知らされるサロンでした。

井口さんは、このサロンの打ち合わせをしていた時に、「後から住みだした人々(和人)が何を奪ってきたのか、という点は明らかにしておきたい」と言っていました。
それは実は、私たちの生き方から失われていること、あるいは最近の社会の生きづらさにもつながっていることに気づかされました。
それに関してひとつだけ紹介します。
島田さんは、死者の送り方について、お金のかかる和人の葬式と死者と共にあるアイヌの人たちの送り方を少しだけ話してくれました。
とても共感しました。
そこにもしかしたら、すべてが象徴されているのかもしれないと思いました。

東京オリンピックの開会式で検討されているというアイヌのパフォーマンスも話題になりました。
魂の入らない商業主義的なものにならなければいいのですが。

島田あけみさんが身心から発する「深い思い」、「生命の躍動」の刺激があまりに大きかったので、今回もまた消化不足で、うまくまとめられず、不十分の報告ですみません。

井口さんが紹介してくれた映像をもっと多くの人に見てもらいたい。
アイヌの文化にもっと多くの人に触れてもらいたいと思いました。
なお、10月21日、島田さんが代表を務めるチャシ アン カラの会の主催で、横浜のスペース・オルタで、「アイヌ感謝祭」が開催されます。
チラシを添付します。

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