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2017/12/15

■緒方修さんの「青い眼の琉球往来」を読みました

16世紀半ばのポルトガル製の世界地図には、中国大陸の東に横たわる列島が描かれ、その列島全体の名として、「琉球」を意味するポルトガル語が記されていた、ということを加藤陽子さんの「戦争まで」という本で知りました。
その列島の一つの島の名が「日本」だったそうです。
日本は、琉球(沖縄)の一部だとの認識が、当時の世界にあったということになる、と加藤さんは書いています。
言うまでもなく、当時の琉球は日本とは別の国家でした。
このことを知って、改めて沖縄のことを調べたくなった時に、沖縄在住の緒方さんから『青い眼の琉球往来』(芙蓉書房出版)が届きました。

不思議なほどのタイミングなので、一気に読ませてもらいました。
そして、1793年に出版された初版の『アメリカン・エンサイクロペディア』や1797年の『エンサイクロペディア・ブリタニカ』には、「琉球とはアジアの強大かつ広大な帝国を成す島々の名前である。その国民は文明開化され、アジアに広がる他の野蛮国と混同してはならない」と書かれていたことを知りました。
ますます沖縄のことを知りたくなりました。

本書は、19世紀に琉球にやってきた“青い眼”の人たちの航海記や遠征記などの記録を読みながら、現地を訪問してまとめた、緒方さんの歴史紀行エッセイです。
単なる記録の紹介ではありません。
緒方さんも、あとがきで、「ところどころ逸脱して原文から離れ、想像の世界に遊んだ」と書いていますが、緒方さんの人柄や考え方が素直に出ていて、エッセイとしても面白い。
時に横道に外れながらも、現代の沖縄問題への鋭い目線も感じさせるメッセージも込められています。
気楽に読める本ですが、読み終えると現在の沖縄の状況への共感や理解が深められるような、そんな緒方さんの思いが伝わってきます。

日本を開国させたペリーは、日本に来る前に琉球に寄っていますが、そのことを私は本書で初めて知りました。
ペリーは、琉球をとても重視していて、日本には2回しか寄港していませんが、琉球には5回も寄稿していたことも、初めて知りました。
本書の副題は「ペリー以前とペリー以後」とあります。
その視点は山口栄鉄さんの著書から学んだ、と緒方さんは書いていますが、それにつづけて、「乱暴な言い方をすれば、ペリー以前、バジル・ホールの航海記は紳士的(英国の狡猾さはあまり見えない)、ペリーは乱暴者(砲艦外交)。沖縄にいると、ペリーのやり方が今でもまかり通っている、と感じる」と書いています。
私は、この短い文章に緒方さんの強い思いを感じます。

緒方さんは、クリフォードの「訪琉日記」を踏まえて、琉球が「香港」と並ぶ自由貿易港になっていた可能性を想像し、もしそうなったら、100年後の日米戦争では琉球国内に英米軍基地がつくられ、そこから日本への爆撃機が連日飛び立っただろうと言います。
そしてその後で、「米軍の嘉手納基地から日本本土に対する核攻撃がいつでも可能という現状を思い出させる」と書いています。
誰もあまり口にしないことですが、私にはとても真実味を感じさせられる言葉です。
沖縄の基地は、中国や北朝鮮ばかりでなく、「日本本土」にも向けられていることに気づかなければいけません。

面白いエピソードもひとつ紹介しておきます。
1816年、琉球王国に寄港、那覇に40余日間滞在した英国人バジル・ホールは、帰国途中で、セントヘレナに流されていたナポレオンのところに立ち寄ったそうです。
バジル・ホールの父は、士官学校でナポレオンと同窓でした。
彼の『航海記』には、「琉球では武器を用いず、貨幣を知らない、また皇帝の名前も聞いたことがない、とホールが語ると、ナポレオンは大笑いし、笑い声が隣室まで聞こえたという」と書かれているそうです。
そしてナポレオンは、こういったそうです。
「そのような嘘は止めてもらいたい。自分が生きているこの世の中に武器を持たない民族がいるはずがない。武器がなければ、その民族はどのように戦争をするのだ」。

沖縄から学ぶことはたくさんありそうです。

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