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2018/08/21

■節子への挽歌4004:「死すべき定め」

節子
佐久間庸和さんが本を薦めてくれました。
アメリカの現役医師が自らの父親の体験を軸に、終末医療のあり方を描いたノンフィクション作品『死すべき定め』です。
「感動とともに人生観を変える、全米で90万部突破のロングセラー」と紹介されています。
本の内容に関しては、佐久間さん(一条真也さん)のブログに詳しく紹介されています。
http://d.hatena.ne.jp/shins2m+new/20180810/p1

生々しい体験記なので、時に読み進めることが難しくなったりして、かなりのエネルギーが必要でしたが、読み終えました。
私の体験とも重なるところも少なくありません。
気付かされることも少なくありませんでしたし、私の気持ちを代弁してくれているようなところもありました。

ただ本書の基軸になっているのは老いて死ぬ定めの話で、老いずに死ぬ話とはやはり違います。
本書にも若くして死を迎える事例はいくつか出てきますが、それはサブストーリーです。

本書でも語られていますが、しばらく前までは「老いる前に死ぬ」のが自然でした。
ですから、この数十年で、「死すべき定め」の意味合いが大きく変わってしまっているのです。
そのために、死を取り巻く環境が、キュア(治療)からケア(気遣い)へと移行しだしているのです。

もう一つ感じたのは、やはり、親と伴侶は違うのだなということです。
私も同居していた両親を見送り、伴侶も見送りましたが、いずれも同じ死別体験ですが、私には異質なものに思えます。

とはいうものの、本書で語られていることは、あまりに私の体験に通じすぎていて、反省させられたことも少なくありません。

心に残るメッセージもいくつかありました。
たとえば、「死を無意味なものにしない唯一の方法は、自分自身を家族や近隣、社会など、なにか大きなものの一部だとみなすことだ。そうしなければ、死すべき定めは恐怖でしかない。しかし、そうみなせば、恐れることはない」という文章がありました。
まったく同感ですが、ただやや「客観的」な表現が気になりました。
これは「自分の死」のことを語っているわけですが、はたして死に直面した当の父親はどうだったでしょうか。

「死すべき定めとの闘いは、自分の人生の一貫性を守る闘いである。過去の自分や将来なりたい自分から切り離されてしまうほど自分が矯小化や無力化、奴隷化されてしまうことを避けようとすることである」。
これもちょっと観察者的で、あまり共感はできません。
そもそも「死すべき定めとの闘い」などというのは存在するのか。
たしかに節子は癌を宣告され、また再発した時には、闘う姿勢はありました。
しかし、そばにいた私に感じたのは、その姿勢は次第にもっとおだやかなものになっていったような気がします。
つまり、今を大事に生きることで、それこそ精一杯だった気がします。
今日も良い日だった。明日も同じように良い日でありますように、というのが、節子の寝る前の言葉でした。
死への恐怖も怒りも、私には感じませんでした。
怒りや恐怖を持っていたのは、私でした。
そのために、節子の平安を乱したこともあったはずです。
うまく説明できませんが、やはり当事者と観察者とは違います。
節子と私との受け止め方ももちろん違います。

本書にはまた、「死にゆく者の役割」を臨終で果たす重要性にも触れています。
ある調査報告によれば、この役割は死にゆく人にとっても残される人にとっても人生を通じてもっとも重要なことだそうです。
これに関してはもう少し踏み込んでほしかったですが、著者は、この役割を否定してしまうことは恥辱を永遠に残すことにもつながる、としか書いてくれていません。
そこがちょっと残念でした。
しかし、「死にゆく者の役割」というのは、私がずっとなんとなく感じていたことでもあります。
これに関しては、私ももう少し考えようと改めて思いました。

物足りないことばかりを書いてしまったのですが、基本的には本書のメッセージはとても心に響くものが多いです。
老いて死ぬものだけではなく、すべての死ぬ者(つまりすべての人間)にとって、大きな安心を与えてくれるかもしれません。
死への不安があるようであれば、あるいはいま近くに死を感ずることがあるのであれば、本書はとても大きな力をくれるはずです。

もっとも私自身は、死への不安はほとんどありません。
節子が通って行った道であれば、それを通るのは当然のことだからです。
それに節子と違って、私の伴侶は、その先にいるのですから。

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