« ■節子への挽歌4048:神の助力は必要か | トップページ | ■ちょっとゆるいカフェサロン「ナチュラリストが見る社会の危うさ、あるいは自然界の面白さ」のお誘い »

2018/10/09

■ブック「日本列島「法」改造論(阿部泰隆 第一法規 3000円)のご紹介

本書は、「逆転の発想による法改革」によって日本を変えるための処方箋です。
というと何やら難しそうですが、普通に生活している人であれば、誰でも「ふんふん」とうなずきながら楽しく読める処方箋が満載された本です。
「漫談」的な要素も込められていて、読者はあきることがありません。

著者の阿部さんは、私の大学時代の友人ですが、毒舌・名言でも有名な、そして具体的な提案活動もしっかりとしている、曲がったことの嫌いな、国士的な学者です。
時に、阿部さんは「変人」とも評されますが、ご自分は「変人」を「変革の人」と読み替えて、変人であることを受け入れています。
「政策法学」という新しい分野の創始者で、その分野でもたくさんの専門書を書いています。

「政策法学」というのは、現在問題となっている法制度を具体的に取り上げ、その立法政策的な改善策を提言する学問だそうです。
公共政策にもつながる具体的な提言や問題提起につながる実践法学と言ってもいいでしょう。
法学というと、私には敷居が高いですが、それであれば私にも関心があります。
というか、その姿勢は、「法とは何か」という、私の基本的な関心課題につながっていますので、まさに私の関心事でもあります。

ちなみに、私自身は、最近「法」というものに、ほとんど関心を失ってきています。
私が法学部で学んだのは「リーガルマインド(法の精神)」ですが、その視点で考えると、最近の法には「心」があるのかと、つい思ってしまうのです。
日本はほんとうに法治国家なのだろうかという疑問さえ、時に感じます。

そんな私のような世捨て人的なひねくれた姿勢ではなく、現実に果敢に取り組んでいるのが、阿部さんです。
専門書を書くかたわら、阿部さんがさまざまなところで発表してきた、日本社会を覆いだしている病魔の法的処方箋の集大成が本書です。
本書の帯に「病魔に苛まれている法と政策を蘇生させよ Dr.阿部の執刀開始!」と書かれていますが、その快刀乱麻ぶりは、時にはちょっと共感できないものもありますが、そこにこそ、本書の真価があります。
誰もが違和感なく読めるようなものは、読む価値も聴く価値もありません。

阿部さんは、日本の法律学に関して、こんなことも書いています。

法律学では、そもそも、「疑え」という研究方針や指導方針がないと感ずる。
判例通説を整理せよ、外国法を整理せよ、そしてまとめよというものが多い。
そこから新学説は出てくるが、それでも、新規の考え方は少ない。

まったくもって同感です。
そして阿部さんは言います。

筆者は、法律家として、日本の法制度がうまくいっているのか、不備をどうすれば改善できるのかを念頭に、何事にも疑問{?}を持って、半世紀以上研究してきた。

こうした視点で、まとめられたのが本書です。
もう少し阿部さんの言葉を引用させてもらいます。

そして、問題を発見したら、解決策としては、通り一遍ではなく、逆転の発想で、あるいは、一手しか読まないのではなく、せめて二手読むとか、二者択一ではなく、合理的な中間案をつくるとか、あるいは強行着陸ではなくソフトランディングを試みるというものである。
このような研究は、法学界では前例がない新しい道を開拓してきたもので、いまだ十分な評価はされていない(それどころか、四面楚歌かもしれない)が、これこそが日本の法学者の使命であると信じている。

どうですか。法律嫌いの人も、ちょっと読みたくなるでしょう。
目次だけでも15頁もあるほど、Dr.阿部の手術のメスは、社会すべてに向けられています。
第1章は「国会・内閣・裁判所のありかた」。つづけて「社会問題・国民生活」「税制改革」「医療福祉」「環境保護」「大学」「その他身辺雑記」と広い分野にわたって論が展開されています。
しかも、そこには、与党独裁体制を許さない法システム、「国旗国歌は作り直せ」とか「オリンピックは無駄」とか、祝日も休日にするな(来年の10連休は大反対)、「命を大切にせず、医療費を無駄使いする厚労省」、さらには「バカほど儲かる医師・弁護士システム」、未亡人の再婚を邪魔する遺族年金、文科省は廃止せよなどといったことが書かれています。
Dr.阿部の、快刀乱麻ぶりがわかるでしょう。

できれば、まずは「はじめに」を読んでもらい、後は関心事に合わせて拾い読みしてもらうのがいいと思います。
「はじめに」に、阿部さんの生き方がわかる文章があるので、引用させてもらいます。

社会科学者仲間では、福島の原発事故にもかかわらず相変わらず「原子力村」で、原発は安全であるという枠内の研究をしたり、阪神・淡路大震災や東日本大震災が身近に起きても我関せず、自分の「学問」に没頭したり、広島原爆の被災地にいながら、被爆者に寄り添うことなく、平和な学問をして偉くなっている人が少なくない。
筆者には、彼らは民の苦しみなど知る余地もないように見える。(中略)
筆者の専攻の行政法学関係者は、役所からお座敷がかかるので、どうしても役所寄りの発想になりがちである。

そうだそうだ!と拍手したいです。
阿部さんの人柄がかなり伝わってくるでしょう。
彼自身は、「とうの昔に御用学者を総撤退し、大学にも縁がないので、「しがらみ」がなく、文科省批判も含め、信念に従った発言をしている」と言っています。
まあ、しがらみがあっても発言してきたと思いますが(そのために社会の主流派から外されたと本人は言っています)。

ちょっと高価なのが気にいりませんが、現代日本の「法的欠陥事典」と考えれば我慢できそうです。
しかし、個々の問題の処方だけが本書のメッセージではありません。
「逆転の発想」で頑固な法律さえも、活かし方が変わってくること。「学問」とは何か、学ぶとは何か、社会をよくしていくためにできることは何か、などということへのヒントも、その気になれば読み取れます。
アジテーションも含意されているかもしれません。
これを読んだ読者が、身近な病魔にDr.阿部流の執刀作業を始めると、日本ももっと住みやすくなるかもしれません。
法の精神が蘇ってくるかもしれません。
ですから本書は、ある意味で、Dr.阿部の執刀術学習講座でもあるのです。

多くの人に読んでもらい、多くの人に執刀をはじめてほしい。
そんな意味で、本書を推薦します。

ちなみに、Dr.阿部の湯島サロンを10月12日の夜開催します。
まだ少し余席があります。
参加ご希望の方は私あて、ご連絡ください。
08311033_5b889ad021862


|

« ■節子への挽歌4048:神の助力は必要か | トップページ | ■ちょっとゆるいカフェサロン「ナチュラリストが見る社会の危うさ、あるいは自然界の面白さ」のお誘い »

お誘い」カテゴリの記事

政治時評」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/30899/67256784

この記事へのトラックバック一覧です: ■ブック「日本列島「法」改造論(阿部泰隆 第一法規 3000円)のご紹介:

« ■節子への挽歌4048:神の助力は必要か | トップページ | ■ちょっとゆるいカフェサロン「ナチュラリストが見る社会の危うさ、あるいは自然界の面白さ」のお誘い »