■経営者は労働者ではないのか
24時間営業をやめたために本部から違約金を請求されそうになったセブンイレブンの事件は、世論の盛り上がりにも支えられてか、なんとか無事おさまりましたが、事態は何も変わっていないのだと改めて思ったのは、昨日(2019年3月15日)の「コンビニ店主は労働者ではない」という中央労働委員会の判断です。
5年前の地方労働委員会の判断を覆したものです。
地労委の委員は現実と個人に目を向けているのに対して、中労委の委員は、法律条文と政府に目を向けているとしか思えません。
「地方の判断」と「中央の判断」が正反対になることは多いのですが、少なくとも私は、ほとんどの場合、地方の判断の方に納得します。
そこには、「地方分権」と「地方主権」の違いが表れていますが、一時、言われ出した「地方主権論」はもう忘れさられたようで残念です。
しかし、そう遠くない先に、関係の反転が起こると私は思っていますが(そうでなければ社会は破綻しますから)、今回、話題にしたいのは「コンビニ経営者は労働者か」という問題です。
中労委は「オーナー店主は労働者とはいえないとして団体交渉権を認めない」としました。
法論理的にはそういえるのかもしれませんが、法の精神は果たしてそうなのかは疑問です。
以前も、「みなし管理職」という概念で、裁判で問題になったことがありますが、オーナーというのは名ばかりで、実際には雇用労働者よりも「労働者」なのではないかと私には思えます。
4年前に東京都労働委員会は、ファミマのオーナーたちのユニオンに対して本部との団体交渉権を認めましたが(今回、それが否定されたわけですが)、その報道の時に紹介されていた、コンビニオーナーは、次のように言っていました。
「オーナー・店長といっても、仕事のほとんどの時間は、アルバイトと同じような業務を自ら行っています。ファミリーマートが以前、あるオーナーに示した経営資料では、加盟店のオーナーと家族で毎週7日、1日18時間の店舗労働を担うことが前提とされていました」
「私たち加盟者は、再契約をしてもらえなければ家族単位で職を失う。本部が1店失うのとはまったく重みが違う。それなのに“対等の事業者”であるというならば、対等の意味をはき違えている」
非正規社員よりも過酷なのではないかと私には思えます。
それはそれとして、問題は、労働者とは何かです。
経営者の一部は、確かに労働しない「不労所得」を得ている人もいるでしょう。
しかし、経営者といえども、特に中小零細企業の経営者は、雇用している社員よりも収入は少ないことも少なくありません。
しかも、従業員よりも時間的にも精神的にも労働している人を私も知っています。
そして過労死した人も、自殺を図った人もいます。
「経営者」と「労働者」は対立概念ではなく、役割分担が違う、同じ労働者(働く人)ではないでしょうか。
実際には、「経営」という労働をしていない「不労経営者」が多くなっているのかもしれませんし、「経営者とは労働者とは違うのだ」というゴーンさんのような人が増えているのかもしれません。
「働き方改革」の本質が、今回の中労委の判断に象徴されているように思えてなりません。
それにしても、なぜ過酷な条件のコンビニオーナーの成り手がいるのかが不思議でなりません。
「働き方改革」の捉え方が私にはまったく理解できません。
だれかが「働き方改革」をしてくれるなどと思ってはいけません。
その改革の「方向」は、もしかしたら反対を向いているのかもしれません。
改めるべきは、働き方ではなく、私たちの生き方であり、社会のあり方ではないかと思います。
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