■湯島サロン「お墓のことを考えたことはありますか」報告
「死の視点から生き方を考えよう」シリーズのサロンは、今回は篠田石材工業の篠田雅央さんに「お墓」のお話をしていただきました。
私自身、お墓に関して、あまりにも無知であったことを痛感させられました。
私にとって、とても示唆に富んだサロンでした。
篠田さんの会社は明治22年創業の老舗で、「石を通じてお客様に喜びと感動をもたらす仕事をします」と、潔く言い切っている理念を掲げ、実践している会社です。
まず、ご自身の会社の歴史を写真で見せてくれながら、墓石やお墓の変化を、とてもわかりやすく紹介してくれました。
紹介できないのが残念ですが、篠田さんが手がけたデザイン墓石にまつわる感動的なお話もありました。
そうした具体的なお話を通して、死とは何か、供養とは何か、生きるとは何か、ということに関する深い問題提起をしてくださいました。
私は目からうろこでした。
つづいて、お墓づくりに関して、「墓地あり・墓石建立なし」「墓地・墓石あり」「墓地・墓石なし」という状況それぞれに対応した、とても具体的な取り組み方の話をしてくださいました。
「墓地・墓石あり」の場合は、お墓に悩むこともないはずですが、実際にはその場合もさまざまな事情があって、むしろ「墓地・墓石あり」のほうが悩ましい状況になることも多いそうです。
参加者の中にも似たような「事情」をお持ちの方もいましたが、そうしたことに関しては、篠田さんのアドバイスももらえました。
墓じまいや墓の引っ越し、改葬や合葬の話も出ました。
話し合いを聞いていて、お墓の問題にはやはりその人の「生き方」が深くつながっていることを思い知らされました。
私が一番感動したのは、墓石の字彫りにも遺族の参加を勧めているという篠田さんの姿勢です。
私事ながら、わが家の仏壇の大日如来は家族の手作りで、魂をご住職に入れてもらったのですが、墓石に関しては、全く思いもつきませんでした。
最後に、長年、墓石に関わってきた篠田さんご自身の「思い」を、参加者への問いかけを含ませながら、話してくれました。
墓石には見えない不思議な力が隠されている。
石は時代を超えて残っていくもの。世界の大半で石を墓としているのは、永遠に生きる石と魂が融合すると本能で感じているからではないか。
自分の先祖の数は何人だと思いますか。
この世に残る遺族の幸せってなんでしょうか。
自分の思いと家族の思いは同じでしょうか。
お墓は人生の道標。
などなど。
いずれも長年の篠田さんの体験からのお話なので、とても心に響きました。
こんな話もしてくれました。
篠田さんが子供のころは、テレビや自動車などが広がりだしていた時代だったが、当時の人たちは、そういう夢の代物を買う前に、お葬式や仏壇やお墓にお金をかけていた。
先祖や子孫にお金をかけて自分は質素に生きている人が多かった。
しかし、今は全く逆になっている。
お墓の簡素化や墓石離れは、先祖崇拝という大切な日本人の心の喪失につながるのではないか。
そして、いくら経済力がついても日本人の大事な心を見失ったら、日本は消滅していくのではないかとしめくくりました。
話し合いではいろんな意見が出ました。
世界中の大半の人々はお墓を持っていないが、だからといって信仰心がないわけではないという指摘もありました。
そもそも今のような墓石が人々に広まったのも、日本でも最近のこと。
また、それでもやはり自分は散骨だという人もいました。
思いを込めた散骨は、惰性で選ぶお墓よりも、私も価値があると思います。
大切なのは、自らにとって「墓」とは何なのだろうかを考えることであり、それを通して、今の生き方を考えることではないかと思います。
それにしても私たちは「お墓」に関して、あまりにも無関心だったような気がします。
お墓の持つさまざまな意味や機能、あるいはお墓を通して実現できることがたくさんあることに、もっと気づいてもいいのではないかと私は思いました。
篠田さんが言うように、人生の墓標としての自分のお墓(私は広義に捉え散骨も含めたいですが)は、やはり自分でしっかりと考えていくのがいいのではないかと思いました。
言葉では明確には語られませんでしたが、死生観や生き方、あるいは家族や社会のあり方を考えさせられるサロンだったともいます。
お墓にはそれだけのパワーがあります。
私が今回一番認識を変えさせられたのは、お墓はそこに在るモノではなく、自らの生を込められる「生きた」存在だということです。
篠田さんのお話はとても示唆に富むお話でしたので、もっとたくさんの人たちに聞いてほしいと思いました。
篠田さんに無理をお願いして、土日にもう一度、同じような「お墓」サロンをしていただこうと思っています。
決まったらまたご案内いたします。
来週はお彼岸なのでお墓詣りに行こうと思います。
| 固定リンク
「サロン報告」カテゴリの記事
- ■湯島サロン「沖縄/南西諸島で急速に進むミサイル基地化」報告(2024.09.15)
- ■湯島サロン「秋の食養生」報告(2024.09.14)
- ■湯島サロン「サンティアゴ巡礼に行きました」報告(2024.09.06)
- ■湯島サロン「『社会心理学講義』を読み解く②」報告(2024.09.03)
- ■近藤サロン②「ドーキンスの道具箱から人間社会の背後にある駆動原理を考える」報告(2024.08.29)
コメント