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2019/04/27

■初原的同一性

最近2冊の本を読みました。
1冊はもうだいぶ前に出たスティーブン・ピンカーの「暴力の人類史」。
もう一冊は最近出た煎本孝さんの「こころの人類学」です。

前者は1000頁を超す大著ですが、後者は新書です。
まったく意識せずに読んだのですが、2冊には共通しているテーマがあります。
人間の本性です。

「暴力の人類史」ではこう書かれています。

人間の本性は、私たちを暴力へと促す動機(たとえば捕食、支配、復讐)をもちあわせているが、適切な環境さえ整っていれば、私たちを平和へと促す動機(たとえば哀れみ、公正感、自制、理性)ももちあわせている。

ピンカーは、人間には「内なる悪魔」と「善なる天使」が内在しているといいますが、どうもこの本を読むと、人間の本性は暴力好きな悪魔のように思えます。
これでもこれでもかというほどの人間の暴力性の事例、たとえば幼児殺しがいかに日常的だったかの記載を読んでしまうと、親子関係に関する常識さえ壊されてしまいます。

一方、「こころの人類学」の煎本さんは、「慈悲、わかちあい、おもいやり、いつくしみは、人類に普遍的に見られる自然的宇宙観」だといいます。
こんなことも書かれています。

「トナカイは、人が飢えているときに自分からやってくる」と、カナダ・インディアンは考えていたという。

煎本さんは、原始の人類は、人間と動物や自然を同一視していて、トナカイは飢えた人間のために施しとしてやってきたのだと考えたというのです。

仏教のジャータカ物語に出てくるような話ですが、トナカイは人間の仲間であり、つまりは人間もまたトナカイのように行動するということを示唆しています。
人間と動物とは異なるものであるが本来的に同一であるとする思考を、煎本さんは初原的同一性とはいい、人間性の起源は、この初原的同一性にあると言います。

私は「初原的同一性」という言葉を初めて知ったので、初原的同一性は、人間と動物だけではなく、あらゆる存在に関して成り立つはずです。
すべては一つだったと考えれば、世界がとても理解しやすくなります。
たとえば、「内なる悪魔」と「善なる天使」もつまるところ同じことなのです。
そして、内なる悪魔もまた、自らのものだと考えれば、他者に対して寛容になれます。

「暴力の人類史」だけを読んでいたら、たぶん世界が広がっただけでしたが、偶然にも同時に「こころの人類学」も読んでいたので、人間嫌いにはならずにすみました。

今回、2冊の本を同時に読んだのは、偶然とは思えません。
誰かに読まされているのではないかと思えてなりません。

最近他者への寛容さを少し失ってきているような気がしていましたが、踏みとどまれそうです。

 

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