■湯島サロン「限定無税財政論」報告
「限定無税財政論」サロンには、12人が参加しました。
事前に武田さんの論文を読んできてもらっていましたので、それをふまえて、武田さんから冒頭「限定無税財政論」構想の枠組みを説明してもらいました。
その段階で、議論が始まってしまったので、問題の整理をさせてもらいました。
というのも、「限定」となっていても「無税財政」という言葉で、提案の趣旨が誤解されてしまう恐れがあるからです。
武田さんも論考にも書き、サロンでも話しましたが、「無税」は絶対条件ではなく、むしろこの構想は「増税構想」なのです。
今回は、武田さんの趣意に沿って、「財政赤字の解消策」と「税制の抜本的見直し」に焦点を整理させてもらいました。
なかなかその2点に絞っての話し合いにはなりませんでしたが、録音していますので、関心のある方はそれを聞いてもらうことにして、話し合いの詳しい報告は省略させてもらいます。
なお、武田さんの論文を読みたい方はご連絡ください。武田さんの同意を得て、送らせてもらいます。
国家財政再建策や新しい金融システムへの提案はたくさん出ていますが、そうした議論は広がっていきません。
それは、金融システムは、まさに現在の秩序(近代国家体制)の根本にあるものであり、専門的な議論だと思われているからかもしれません。
しかし、家計に関しては誰もが議論できるように、国家財政の大きな枠踏みはきわめて簡単です。
現在の国家財政は、概算イメージですが、国債による借り入れが30兆円強で、合計100兆円程度ですが、歳出は実際の行政費用が70兆円前後、残りが国債費、うち10兆円が国債の利息です。
このあたりの数字はもちろんネットで見られますが、なかなかわかりにくいです。
私はそこに「意図」を感じます。
金融システムは、まさに現在の秩序(近代国家体制)の根本にあるものだからです。
大切なことは毎年10兆円の利子が支払われているということです。
100兆円の歳出のうちの1割が債権者への利子ということです。
逆に言えば、財政赤字のおかげで、債権者は毎年10兆円の不労所得を得ているということです。
この意味はしっかりと考えなければいけません、
また、実際の行政費用である基礎的財政歳出(「真水」と言われている部分)は、例えば2010年度には71兆円でしたが、2018年度で74兆円とあまり変わっていません。
こうしたことも含めて、私たちは私たちの国である日本の国家財政に関してあまり実体が見えてこないまま、財政赤字の危機感を植え付けられているような気がします。
ちなみに年金の話はまた別の枠組みで考えなければいけません。
財政論や新しい金融システムの基本になる「貨幣」に関してもたくさんの議論が展開されています。
たとえば、現在の貨幣は、利子を生み出す債務として創り出されることから「債務貨幣システム」とも呼ばれています。
債務はいうまでもなく「支配」とか「権力」につながります。貨幣が果たす機能として、「価値尺度」「交換手段」「価値貯蔵」の3つがあげられますが、最近の貨幣は「権力の支配手段」として機能を強めています。
ここから「陰謀論」が生まれてくるわけですが、しかしそれを無視しては財政改革は語れません。
また、貨幣といってもさまざまなものがあります。
日本の場合は、政府貨幣(硬貨)、日本銀行券(政府から委託された会社が発行し管理しています)、そして預金(銀行の預金口座にある信用のデジタル数字)の3種類があります。
通貨や貨幣として流通しているものは、その一部でしかありません。
多くは「信用」によって生み出されバーチャルな存在です。
20世紀後半に「金本位制」が終わった後、貨幣はそれまでとは全く違うものになりました。
つまり「実体経済」と切り離された「金融経済」が生まれたのです。
サロンでも議論になりましたが、日銀がいくら国債を引き受けても市中には実際の「貨幣」はあまり増えず、インフレターゲットも実現しないでいます。
国債発行の多くの部分が、そのまま金融資産になり、資産家にとっての利子を生み出す役割を果たしているわけです。
大切なのは、「貨幣とは何か」「財政とは何か」「税金とは何か」の議論ではないかと、昨日の話し合いを聞いていて改めて思いました。
また、サロンでも指摘させてもらいましたが、経済成長を前提にするかどうかで、貨幣のあり方も財政のあり方も変わってきます。
そもそも「利子」という発想は、経済成長を前提にしていますから、最近言われ出している定常経済や縮小経済においては、利子のありかたを見直す必要があります。
武田構想は成長路線を前提にしています。
報告というよりも問題の整理になってしまいましたが、財政は国家構造の基本ともいえます。
だから武田さんも「国家論」の一環として財政を取り上げたのです。
このシリーズはもう少し違った視点も含めてサロンを続けたいと思います。
最近、広がってきている「公共貨幣論」や一時期話題になった「虚構経済論」のサロンも企画しようと思います。
今回の話し合いにもつながるサロンとして、7月15日には中嶋さんのサロン、そして今回も話題になった資本主義に代わる経済をテーマにした平田さんのサロンが8月17日にあります。
よろしかったらご参加ください。
公共貨幣論や虚構経済論に関心のある方はご連絡ください。
話してくださる方がいたら大歓迎です。
いつもとはちょっと違った報告になってしましました。
武田構想とは違う財政赤字の解消策や課税方式の転換なども話題になりましたが、紹介は省略させてもらいました。
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