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2019/07/19

■湯島サロン「二宮尊徳に学ぶまちづくりと生き方」報告

露木さんの二宮尊徳シリーズのサロンは2回目です。
今回は、前回をさらに一歩進めた形で、ご自身のまちづくり実践にも触れながら、尊徳を解説してくれました。

二宮尊徳は実践の人だと言われていますが、露木さんもそういう生き方を志向して、マスコミの世界から生活に直結するまちづくりの世界に転じたという話から始まりました。
その話も示唆に富むもので、私はむしろそれをテーマにしたいほどでしたが、今回は尊徳の地域再建、財政再建がテーマです。

薪を背負って本を読んでいる二宮金次郎像が有名で、二宮尊徳といえば、勤倹努力を絵に描いた道徳(修身)模範生のようなイメージを持っている人も多いと思いますが、実際には、権力に対峙しながら、人々の生活の視点に立って、社会の変革に実践的に取り組んだ人です。
しかも、お金を効果的に回していく「報徳仕法」といわれる経済の仕組みを踏まえて、荒廃した地域や生活を、自らしっかりとリスクを引き受けながら、取り組んできた人です。
そこには、まさに現在、私たちが直面している財政問題や地域整備の解決への示唆がたくさん含まれています。
二宮尊徳の実践的な知恵は、いまこそ見直されるべき内容を持っていると思います。

尊徳の実践は、目標がぶれないことと行動の緻密さとダイナミズムです。
目標は、「富国安民」、つまり「民が豊かにならないと国は豊かにならない」という考えです。
「富国強兵」という言葉はなじみがありますが、「富国安民」という言葉はあまり聞くことはありません。
「国が豊かにならないと民は豊かにならない」という考えで、経済成長を発想の起点にしている現在の日本とは真反対です。
この一事だけでも、私は二宮尊徳の現代的意味を感じます。

あまり知られていませんが、二宮尊徳は社会を変えていくためにはお金が必要だと考えていましたから、コメ相場によって資金をためるという財テクの達人でした。
そうして得た財産は、村の再生に思い切ってつぎ込む覚悟の人でもありました。
現在の企業家と違うのは、財産の使い方の潔さと「富国安民」の信念です。

また、その取り組みは個人プレイではなく、さまざまな才能を持った人たちによるチーム尊徳の結成で総合的対応をしていたといいます。
ですから、尊徳がいなくなった後も、いまなお『報徳運動』として続いているわけです。

尊徳の取り組みの4大原則は「至誠・勤労・分度・推譲」といわれています。
大切なのは、社会のリーダーへの強い「分度」(無駄を排し支出に制限をかける)要請と庶民に対しても「推譲」(余剰金の社会への投資)を呼びかけたことです。
日本に寄付文化がないという人がいますが、報徳思想とは寄付文化そのものともいえます。

そうした取り組みで、二宮尊徳は日本各地の600にも及ぶ疲弊した農村を建て直したそうです。
こうした二宮尊徳の実践活動を露木さんはわかりやすく紹介してくれました。

露木さんは、1998年から2011年まで、神奈川県の開成町の町長として、地域整備に取り組んできました。
その成果は、現在の開成町の実状をみれば、わかります。
人口減少という時代状況の中で、開成町の人口は増え続けていますし、長期的な都市計画に支えられて、バランスのとれた開発がすすめられています。
小田急線から見える、公園のような水田風景を目にした人も多いでしょう。

露木さんは、ご自身のまちづくりの体験から、最後に「富国安民」のために尊徳に欠けていたものは何だったかを話されました。
それはなんと、ビジョンを共有させていくための「ほら!仮説」だというのです。
確信に裏打ちされた大胆なビジョンが、人々を喚起し、行動へと駆り立てる!
そういう面が、尊徳には足りなかったのではないのか、と。

露木さんのお父さんも、開成町の町長でしたが、1963年に開成町長選挙では、「ホラは吹いてもウソはつかない」を信条に、当時、水田のみといってもよい状況の開成町を「小田原に次ぐ副中心都市にする」と主張して町長選に勝利したそうです。
そして、そのために目先の住宅開発ではなく、しっかりした都市計画に基づき、地域整備をしてきました。
そのため、開成町ではバブル期においても乱開発は避けられたそうです。

それから30年たって、息子が、父が長期的な展望に従って整備していた仕上げに取り組んだというわけです。
「まちづくりは60年くらいの視野で取り組まなければいけない」と昔、水俣の市長だった吉井さんに教えてもらったのを思い出しました。

内容の濃いサロンでしたので、露木さんの話の一部を紹介するだけになってしまいましたが、話し合いでの話題も興味あるものが多く、報告できないのが残念です。
これからの露木さんの実践に関しても問いかけがありましたが、露木さんのお話を聞いて、数年後にまた露木さんに話をしてほしいと思いました。

参加者の一人から、「覚悟」がキーワードだと思ったという発言がありました。
二宮尊徳は、「実践の人」であると同時に、「覚悟の人」だったのです。
現在の日本に欠けているのは、まさに「覚悟の人」かもしれません。
ちなみに、露木さんは二宮尊徳の「変革性」を強調されていました。

尊徳に関する書籍はたくさんありますが、露木さんは、大藤修さんの「二宮尊徳」(吉川弘文館)を推薦しました。
私は読んでいなかったので、サロンが終わった後、急いで読みました。
とても気づかされることの多い本でした。

いつも思うのですが、こうした報告でお伝えできるのは、サロンでのほんの一部の話です。
それがいつも残念でなりません。
長くなってすみません。

Tsuyuki190714

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