■節子への挽歌4347:郷愁
節子
2日間かけて「湾の篝火」という小説を読みました。
2002年から2003年にかけて「しんぶん赤旗」に連載された小説で、1986年に起こった大手造船会社の7000人の大リストラ計画に端を発した労使の闘争を、労働者とその家族の視点からドキュメントタッチで描いた作品です。
上下巻で600頁を超える小説です。
何で読んだかというと、先日、この小説の登場人物のモデルになった人の娘さんに会ったからです。
その人は共産党員で、いまも地道な反戦活動に取り組んでいるようですが、私と同世代で、同じ時期を会社で過ごしながら私とは全く違う生き方をしていることに共感を持ったのです。
たぶん考え方には通ずるものがあると思いますが、行動はちがっている。
たぶんちょっとした違いがその分岐点だったのでしょう。
一時期、小林多喜二の「蟹工船」が話題になった時がありますが、あれを読んでもなかなか実感が生まれませんでしたが、本書は、少なくとも私には生々しい実感が伝わってきました。
1964年に会社に入り、工場の労務課に4年勤務したおかげです。
しかし工場で、その人は共産党に出会い、私は節子に会ってしまった。
私は、工場の労務課というところに配属され、どちらかといえば、労働者管理の仕事でした。
もっともそこに対応できずに、いろんなことがあったのですが、結局、労務的な仕事はさせてもらえませんでした。
そして4年後の東京に転勤。
この小説を読んで、強い郷愁の念を感じました。
そこで書かれている人間模様は、まさに私も体験したことでした。
当時の企業には少なくとも「人間たち」がいた。
経営者側や使用者側にも、雇用者や労働者の側にもです。
そしてそれらを支える家庭や社会にもです。
あの時代がよかったなどとは言いませんが、良くも悪くも人間を感ずる時代でした。
私にとっては、4年間の工場時代がその後の私の人生を決めました。
何も知らずに育った私が、世界の多様さと素晴らしさを知ったのは、あの4年間でした。
書籍からは学びえようもない工場での労務管理の実態を先輩たちから聞けたのも、私の価値観に大きな影響を与えたはずです。
そして、そうした見聞に、「いのち」を与えてくれたのが節子でした。
工場時代の思い出がとても懐かしく思い出されました。
やはり今年か来年、一度、滋賀の工場時代の仲間たちに会いに行こうと思います。
あの4年間が、私の人生の第2の出発点でしたから。
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