■老後の生活費が2000万円不足するという発想
公的年金の将来の見通しを示す年金財政検証の結果が、昨日、厚生労働省から発表されました。
テレビや新聞でその内容が報道されていますが、それを聞いたり読んだりしても、何がなんだかさっぱりわかりません。
というよりも、わからないように発表したり報道したりしているのではないかとさえ勘ぐりたくなります。
今回の消費税増税のやり方もそうですが、何が何だかわからなくしてしまって、考えたり反論したりするのをあきらめさせるのが、最近の政府のやり方です。
それを未消化のまま、報道するマスコミやキャスターには驚きます。
話していて、書いていて、おかしいと思わないはずはないのですが。
それはともかく、私が一番気になっているのは、金融庁審議会報告書をきっかけに騒がれ出している「老後の生活費が2千万円不足する」という世間の動きです。
テレビでもそれを前提に番組が組まれ、多くの人がそう考えてきているようですが、そこにこそ、私は大きな違和感を持ちます。
老後の生活費が不足するのであれば、その格差をどう埋めればいいのか
その問題が、すぐに「不足する2000万円をどうやって確保していくか」という問題にすり替わってしまうことに違和感を持つのです。
これではまるで、餌をもらって生きている家畜の発想です。
そういう生き方を変えればいいだけの話なのではないか。
そもそもお金がなければ生きていけないようになったのは、たかだかこの数十年の話です。
私はそういう社会こそがおかしいと思っています。
お金がすべてのいまの社会はおかしいという人は、私の周りにも少なくありません。
そうであれば、その「おかしな生き方」を捨てればいいだけの話ですが、そういう論を説く人に限って、生き方を変えようとはしていないようにも感じます。
最近では、人間が、生活者ではなく「(お金の)消費者」になってしまった。
これに関してはこれまで何回か書いてきていますので、繰り返しませんが、そういうお金を基準にした生き方から抜け出さない限り、生活は取り戻せません。
そもそも、本当に不足するのは2000万円なのでしょうか。
お金があれば、老後の生活は安心なのでしょうか。
解決すべきは、老後の生活をどう豊かにするかであって、2000万円をどう確保するかではないでしょう。
問題は、2000万円不足するということではなく、保証された年金額でどう豊かな生活を維持できるかではないでしょうか。
豊かな生活は、金銭だけでは実現しません。
にもかかわらず、金銭だけに依存している今の生活を見直すことの方が大切ではないか。
多くの人がそういう考えを持ち出せば、社会もまた変わっていくでしょう。
大切なことは、金銭への生活依存度を最小化していくような生き方の見直しではないのか。
問題は老後の生活ではなくて、いまの生活なのです。
お金から自由になると、たぶん生活は豊かになります。
しかし、時間はかかるでしょう。
私の場合は、20年以上かかってもまだお金からは自由になれていません。
しかし、不十分でも自らが納得できる方向に向かって、少しでも動き出さねば、何も変わりません。
ちなみにいま2000万円あれば、湯島のサロンもずっと続けられるので、2000万円は欲しい気もしますが。
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