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2019/10/30

■雨男発言と身の丈発言

またまた国家議員の発言が問題になっています。

議員の失言に国民の関心を向けることで、肝心のことから目を反らさすのは、与野党を問わず国会議員の好きなことですが、野党党首の発言を聞いていて、ほんとうに彼らの政治感覚を疑いたくなります。
そもそも国会は本来、「知恵を出し合う」場であって「言い争い」の場ではありません。
そんなことに大事な時間を使ってほしくはありません。

またそれに乗じて、問題を「表層的な」次元で終止させてしまうマスコミにもいつもながら失望します。
問題は、「言葉」ではなく、それが表象している政治の原状です。

雨男発言は、確かに被災された人には不快感を与えたかもしれませんが、私がもし被災者だったら、そんなことよりも実際の支援活動の遅れや責任逃れに終始する森田知事の発言のほうこそ不快に思うでしょう。

身の丈発言は、30年前から講演などで、「分をわきまえる」生き方から抜けでましょうと話していた私としては、賛成はできませんが、それ以上に私が話していたころもほとんどの人は私の発言には共感してくれていませんでしたから、「言葉」はともかく、多くの大人たちはみんなそう思っているのだろうと感じていますので、与党の政治家が相発言しても、まったく違和感はありません。

それに今でも、「身の丈に合った生き方」を勧める人は人生の「先達」は少なくありません。
それにそもそも、そういう考えの政治家を選んで評価していながら、そんな発言を大問題にする人の無責任さにこそ怒りを感じます。

また誤解されそうな表現不足の文章ですが、問題は「言葉」ではなく、たとえば今回は発言の契機になった大学入試制度の設計思想です。
さらにはその根底にある「政策思想」であり、政策立案を担っている人たちの人生観です。
そこに焦点を向けなければ、何も解決しません。

いや、萩生田発言は、その制度設計の思想を言語化し可視化してくれたと捉えるべきであり、「失言」ではなく「名言」と捉えるべきではないかとも思えます。
野党も国民も、むしろ萩生田さんに感謝して、制度をよくする方向に変えていく契機にすべきなのです。

ついでに言えば、「雨男発言」も、雨男を大臣にしてはいけないという教訓にして、雨男は大臣にしないような教訓にすべきです。
これはちょっと蛇足でしたが、でもいろんなことを示唆しているようにも思います。

身の丈発言は、まさに現在の政治の思想を象徴しています。
つまり格差を是認し、社会階層を固定化する教育をしていこうということですから、萩生田文部科学大臣は素直にそれを発言し、世論を誘導しているわけで、決して「失言」などではないのです。

こういうことはこれまでも何回か繰り返され、失言問題として謝罪と時に辞任さえありましたが、世論を誘導し国民を教育するうえでは効果を発揮していると私には思えます。
一方でタテマエのスローガンを掲げ(一億総活躍、女性の活躍…)、一方ではこうした形でその意図を無意識のうちに繰り返し働きかけて世論を誘導するのは、いまの政治の常道です。

言葉論争に巻き込まれるような愚は避けるべきであり、むしろ失言問題ではなく、肝心の入試問題や文科行政方針を問題にする政策論争にしてほしいです。
そこまでいかなければ、結局は安倍政権の意図に利用されるだけでしょう。
立憲民主党もまた結局は自民党の応援政党になってきていると思えてなりません。
安倍政権を倒したいなら、基本的な姿勢を変えなければいけません。

道化役の政治家の「失言」の向こうにあるものに、目を向けて、それを可視化し、国民に呼びかけてほしい。
高校生たちがせっかく立ち上がっているのですから、高校生たちと共に共闘してほしい。
大切なのは、萩生田さんを問い詰めることではなく(以前の大きな問題でさえ問い詰められなかったのですから)、政策や利権がらみの教育制度を変えることです。
そのためには、国民の力が不可欠です。
そこに呼びかけることをしなければ新しい政治は始まりません。
いまの野党にはその気はないのでしょうか。

人の失言をあげつらう国会にはもうあきあきです。

 

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